●路上で寝るのを禁じる法律は「もうある」
「路上で寝る行為を法律で禁止すべきだ」という声もあります。ただ、こうした行為はすでに禁止されています。
「道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり…ていること」は禁止されており、違反すると5万円以下の罰金です(道路交通法76条4項2号、120条1項10号)。酒に酔って道路で交通の妨害となるような程度にふらつくことも禁じられています(同法76条4項1号)。
「路上で寝るのが違法なのに、なぜ運転手が処罰されるのか」。そう考えるのは自然なことだと思います。
ただ、裁判所が見ているのは「どちらがルールを破ったか」とか、「どちらがより悪いか」ではありません。
あくまでも、今回のケースでは、路上で寝ていた人をはねてしまった運転手の行為が、過失運転致死罪の要件にあてはまるかが検討されます。
●「信頼の原則」の適用は難しい
なお、交通事故には「信頼の原則」という考え方もあります。ほかの人も交通ルールを守ると信頼して運転した場合には、事故を起こしても過失が否定される、というものです。
ただ、これが使える場面は限られています。その場の交通状況からみて、そう信じるのが相当とはいえないときには、適用されないとされています(最決昭和45年(1970年)7月28日)。
路上で寝ていた人の事案でも、この考え方が決め手になっているわけではありません。裁判所は、人だと分かったか、避けられたか、という具体的な検討で結論を出しています。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

