そこで今回は、東京・お台場にある「日本科学未来館」の科学コミュニケーターさんに取材。親がつい気にしてしまう「自由研究の正解」について聞いてきました!
話を聞いたのは……

日本科学未来館 科学コミュニケーション室 科学コミュニケーター
出沢良樹さん
前職は高校教師。担当教科は理科だった。「知ることで人生が豊かになる」を子どもたちに伝えたくて教師になったという。現在は日本科学未来館の科学コミュニケーターとして、来館者との対話やイベントの企画・運営などを通じて、科学と社会をつなぐ活動を行っている。
お悩み①自由研究のテーマが全然決められない!
ーー自由研究においてまず難航するのがテーマ決めです。ちょうどいいテーマがないかネット検索すると、「泥団子を作ろう」「割れないシャボン玉を作ろう」「塩の結晶を作ろう」といったテーマが浮上するのですが、なんだかしっくりこなくて……。
出沢良樹さん(以下、出沢) 「しっくりこない」というのは検索結果に対して「これをやっても意味があるのかな?」と思ってしまうような“しっくりこなさ”ですか?
ーーそうですね。「これって自由研究の枠なの?」「みんなもやっていそうなテーマをトレースして意味があるのか?」など、ついモヤモヤしてしまいます。
出沢 ネット検索して表示されるものは、子どもがやりやすい、パッケージ化された完成品のようなものですよね。だから当然、それぞれのお子さまの興味の有無や保護者の方が求めているものとぴったり合う……ということがあまりない、「興味のズレ」が顕著に表われるのだと思います。お子さまもそのテーマに興味が持てなければ、保護者の方も「なぜいまこれをやるのか、理解できない」となり、しっくりこないのではないでしょうか。

(※画像はイメージです)
ーーおっしゃるとおりです。一方で、子どもが自ら何か発想しても、「これをテーマにする意義って? どう深めればいいの?」ということが見出しづらくて。
出沢 最初から「立派な問い」や「すごい研究」を考える必要はありません。パッケージ化された検索結果や、市販のキットでもいいのですが、そういったものを入口にして取り組むのは、それはそれで意義があるかなと思います。
というのも、自由研究というと「問いを作って検証する」というイメージがあるかなと思いますが、そもそも何に興味があるのかわからないからこそ、「とりあえずネットで検索してみる」段階ということですよね。
そんななかで問いを生み出すためには、パッケージ化されたものでもまずはやってみる、というのもひとつの手です。
ーーたとえば「泥団子を作ろう」でも?
出沢 そうですね。「作ってみたらうまくいかなかった」とか「作ってみたら新しい何かが見えた」とか、過程で学べることがあるんです。そこを知ることによって解像度が上がり、「問い」を作ることができる、ということもあると思います。
ーーなるほど! 初手で、興味がなさそう・意義が見出せない、からといってスルーするのはもったいないですね。
出沢 「問い」って、いきなりひらめくものではなくて。実際に研究者の方も、フィールドワークなど、観察したり試したりといった経験から気づきを得て、問いが生まれることが多いんです。
ちなみに私自身の自由研究は、小・中学と合わせて7年間セミについてでした。
ーー7年間ずっと、セミについてですか!?
出沢 はい。最初から「問い」を立てたわけではなく、もともとセミが好きで、自宅の周りが林でたくさん鳴いていたので「とりあえず捕ってみようか」という軽い気持ちが始まりでした。捕っていくと、時間帯によって捕れる個体が違っていたり、セミによっている場所が違ったり、捕りやすい戦略が違ったり……がわかってくるんですよね。

日本科学未来館の外に並ぶ街路樹で、セミが止まりがちな場所を教えてくれた出沢さん
出沢 たとえばアブラゼミは体にタカラダニ(赤いダニ)がついていることが多くて、「タカラダニはコンクリートによくいるから、アブラゼミは木だけでなくコンクリートにもとまりがちなんじゃないのか」と考えたり。
ニイニイゼミは桜の樹皮に溶け込むような模様をしているので、「桜の木に擬態しているから大丈夫だ」と慢心して、網の音を立てて捕ろうとしても鳴き続けているのではないか……と想像したり。自分なりに観察してみることで、そういった問いが出てくるんです。
もちろんそうした子どもなりの問いが実際に正しかったかはわかりませんが、その気づきや考えが正解かどうかを気にしすぎる必要はないと思います。大事なのは、経験から気づきが見えてくるということなんですよね。
ーーたしかに、まずは体験してみないと、わからないことばかりですね。
出沢 お子さまが何に興味があるかわからないならば、まずは定番テーマでもやってみる。もちろんそこから「問い」に発展しなくても、やってみた結果、気づいたことを記録すれば、探究活動としての自由研究になり得ます。
文科省が示している「探究」の考え方でも、問いを見つけて、情報を集め、自分なりにまとめるという流れが大切にされています。小学生の自由研究ではまず、「しっかり記録してまとめて表現する」という流れを学ぶことが大事なのだと思います。
回答:ネット検索で「興味がなさそう」と感じても、スモールステップとしていろいろやってみたら、問いが生まれることがある!
