AI加工された「実在しない裸」、初の児童ポルノ認定も…専門家「無理な解釈」と異論…名古屋地裁判決を検証

AI加工された「実在しない裸」、初の児童ポルノ認定も…専門家「無理な解釈」と異論…名古屋地裁判決を検証

●今回のAI画像は「児童ポルノ」なのか

──裁判所は「身体部分はAIによって描写されたもの」であっても、実在児童の写真を使い「一般人が誤信するに足りる精巧なもの」だとして児童ポルノと認定しました。この「精巧さ」や「一般人の誤信」を基準とする考え方をどう評価しますか。

聞くところによると、今回問題になったのは、普段着の児童の全身写真を全裸に加工したものだったようです。

そのような画像が、児童ポルノ法2条3項3号の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀(でん)部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているもの」に該当するかが問題となります。

法文上、同号の「児童」は、同条1項に定義される「18歳未満の実在人」を意味しますので、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」というのも、「実在する児童」の「実在する(裸の)姿態」を意味することになります。

他の条項を見ても、姿態をとらせて製造罪(7条4項)、ひそかに製造罪(同条5項)も、児童ポルノは「実在する姿態」を記録したものであることを前提にしています。

さらに、児童ポルノ製造目的人身売買罪(8条)では端的に「第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的」とされています。

この観点から見れば、着衣の児童の画像をAIで加工した場合、加工された部分は「実在する児童」の姿態でも「実在する姿態」ではないため、児童ポルノには該当しないことになります。

●過去の裁判例に従っても「児童ポルノにならない」

──「一般人の誤信」という基準は、過去の裁判例にもあるものでしょうか。

先例として、児童のヌード写真集を素材にCGで児童の裸体を描いたとされる事案があります(東京高判平成29年1月24日)。この判決における「一般人の認識」という基準は、素材となった実在の児童と、それをもとに作られたCG画像とが同一かどうかを判断するために用いたものと解しています。

そのうえで、実際の姿態と若干の差異があっても、なお「当該児童を描写したといえる程度に、被写体とそれを基に描いた画像等が同一であると認められる場合には、その児童の権利侵害が生じ得る」として、処罰の対象になるとしました。

つまり、この判決の「一般人の認識」は、あくまで実在の児童と画像との同一性を測る基準です。これに従えば、顔だけが実在で、乳房や陰部を想像で描いたような画像は、「当該児童を描写したといえる程度に……同一であると認められ」ないので、児童ポルノにはなりません。

──児童ポルノ規制法2条3項の「児童の姿態」という要件との関係では、どう考えますか。

法文上、「児童」については実在性を要件として、「児童の姿態」については実在性を要件としないというのは、矛盾します。

7条4項、5項、8条の場合は「児童の姿態」は「実在する姿態」を意味すると理解されますが、1項の場合だけ実在性を要件としないとするのは、法の解釈として一貫性を欠くでしょう。

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