●退路を断たれ、自死を選んだ経営者も
起業当時から、ここまで大きく制度が変わったことの影響は、申請件数の減少や閉店、帰国という選択だけにとどまらない。退路を断たれ、自死を選んだ経営者は1人、2人ではないという。
「外国で仕事をするには、それなりの覚悟が必要です。築いた店を閉じるのは、自分の身を削るようなものですし、店は借りるよりも返すほうが大変なんです。
行政側は書類で判断するしかないのでしょうが、その人の人生に関わることなので、経営実態のある店には、配慮があればと思います」
どうすれば店を守ることができるのか。窮地に置かれた当事者の誰もが、そのことを考えている。
「複数の経営者が資本を合わせてホールディングスカンパニーにして、支店として営業するという考えもあるかもしれません。
とはいえ、店の少ない地域で一緒にやる相手を見つけるのは難しいでしょうし、現実的に可能かどうかもわかりません。ただ、みなさん、そこまで考えざるを得ない状況に置かれています」
制度変更は今後さらに続くのではないか──。そんな不安も広がっている。
「がんばって厳しい要件を乗り越えても、制度がさらに厳しくならないとは限りません。先が見えない状況に置かれると、人間は誰でも心配になるものです。
厳格化は『もう来ないでほしい』というサインなのか。私たちは日本にいてもいいのか。みなさん、そんな不安を抱えています」
●選択肢が減ることは「街のバラエティ」に影響する
貿易業や飲食業に携わる一方、西葛西で半世紀近く地域との交流を続けてきたチャンドラニさんは、日本社会の変化をこう見つめる。
「大きな波であることは間違いないです。みなさん、風当たりが厳しいと感じていますが、家族がいて、子どもが学校に通っている以上、何とか乗り越えようとしています」
実際、人気店であっても閉店を余儀なくされるケースが出始めている。
「日本社会の土台を支えているのは、中小零細企業です。飲食店に限っても、どんな地方に行っても安心して食事ができる食堂があります。一方で、高齢化によって畳むお店もあり、そこに外国の人たちが入っていきました。
エスニック系料理店がなくなっても、新たな動きは起こるでしょう。ただ、選択肢が減ることは、街のバラエティや生活の豊かさに影響します。不動産のオーナーにとっても家賃収入がなくなるわけですし、シャッターを下ろす建物が増えれば、街は殺風景になります」

