〈森を育て、地域ごとに水を守る〉
――森林の整備は、水を蓄えること以外にも地域の暮らしと関係するのでしょうか。
田中氏 健全な森林は雨を受け止め、水を一度に流さず、時間をかけて地下へ送る働きを持っています。土砂災害や河川の急激な増水のリスクを抑えるためにも、森林を健全な状態に保つことが大切です。
ただ、木を植えればよいという単純な話ではありません。地形や自然環境、そこで暮らす人の生活や仕事、地域が抱える課題はそれぞれ違います。
河川の上流では、森林保全が中心になります。日本には人工林が多く、放っておけば健全に育つわけではありません。木を間引く間伐など、人の手による管理が必要です。
一方、阿蘇のような地域では草原を守る方法が合っています。下流では、水田を活用したり、失われつつある湿地を復元したりする方法があります。
全国に一つの方法を当てはめるのではなく、それぞれの地域に合った方法を選び、活動を続けることが重要です。
〈「良いことをした」では足りない〉
――従来のCSRとは、どう違いますか。
田中氏 CSRの定義は企業によって違いますが、以前は社会貢献やボランティアに近い意味で受け止められることが多かったと思います。
ただ、「良いことをしているから、それでよい」では、自己満足になってしまいます。
実際に水を使っている以上、科学的な計算や根拠に基づき、自然へ還していく必要があります。そこまで取り組んで、初めて企業として責任を果たしたと言えるのではないでしょうか。
今回の飯能市との活動でも、対象となる森林がどれだけの水を蓄えられるかを試算しています。活動したという事実だけでなく、その成果を数字で確認することが重要だと考えています。

