血族結婚を繰り返したスペインのハプスブルク家
ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス』, Public domain, via Wikimedia Commons.
マルガリータ・テレサ(1651-1673)が生を受けたのは、17世紀のスペイン宮廷に君臨するハプスブルク家でした。
当時のスペイン・ハプスブルク家では、血族結婚が繰り返されていました。王族たちは、自分たちの血筋に他家の血が混じるのを嫌ったのです。
マルガリータ・テレサ自身も、叔父と姪の間柄で結ばれた両親の長女として生まれました。
ディエゴ・ベラスケス『黒衣のフェリペ4世』, Public domain, via Wikimedia Commons.
マルガリータ・テレサの父であるフェリペ4世(1605-1665)は、スペインの国王です。彼はベラスケスの描く肖像画を非常に気に入っており、他の画家に自分の絵を描かせなかったと言います。
ディエゴ・ベラスケス『王妃マリアナ』, Public domain, via Wikimedia Commons.
そんなフェリペ4世の2番目の妻となったのが、マルガリータ・テレサの母であるマリアナ・デ・アウストリア(1634-1696)でした。彼女はフェリペ4世の実の姪であり、マルガリータ・テレサを含む5人の子どもを産みました。
「青い血」を受け継いだちいさな王女
ディエゴ・ベラスケス『白と銀のドレスを着たマルガリータ』, Public domain, via Wikimedia Commons.
スペインのハプスブルク家では、長年にわたる血族結婚の繰り返しが、死産、先天性の病気、そして乳幼児の死亡率の高さに繋がっていきました。それでも王族たちは、高貴な自分たちの血筋を守るために近親者同士の婚姻を繰り返したのでした。
その長い繰り返しの中で、彼らの遺伝子はより濃くなりました。そして、この一族特有の外見的特徴を強めていったのです。
金髪に碧眼、そしてあまりにも白い肌のために浮き出ていた青い血管。この特徴から、スペイン・ハプスブルク家は「青い血」を持っていると言われるようになりました。
マルガリータ・テレサも、こうした特徴を強く持つ王女として描かれています。
ディエゴ・ベラスケス『青いドレスのマルガリータ王女』, Public domain, via Wikimedia Commons.
『青いドレスのマルガリータ王女』は、マルガリータ・テレサが8歳になったばかりの頃に描かれた肖像画です。本作を描き上げた翌年にベラスケスはこの世を去ったため、これが彼の手による最後のマルガリータ像として残っています。
横に大きく張り出したドレスは、当時のスペイン宮廷の女性たちの定番の装いでした。しかし、他のヨーロッパ諸国ではこのファッションは時代遅れとされていたと言います。
さらにこの頃、スペインはフランスに敗戦し、ヨーロッパの覇権を奪われつつありました。かつて隆盛を誇ったスペインという国に、少しずつ陰りが差してきた時期だったのです。
このように複雑な状況の中、マルガリータ・テレサは「青い血」を受け継ぎながら、大人の女性へと成長していきました。
