「インスリン注射を勧められたけれど、毎月の費用がどれくらい増えるのか不安」「注射の手技料や測定器の費用まで含めるといくらになるのだろう」といった不安を感じている方は少なくないのではないでしょうか。2型糖尿病でインスリン療法が必要になると、飲み薬だけの治療と比べて自己負担が増えることが多く、月々どれくらいの費用がかかるのかを早めに知っておくことは、治療を続けていくうえでも、家計管理のうえでもとても重要です。この記事では、インスリン療法を始めた直後と、治療が安定した後、それぞれの費用の目安を3割負担を基準に整理し、自己負担を軽減できる公的制度についても解説します。

監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。内分泌代謝・糖尿病内科専門医。
インスリン療法を始めたとき(導入初期)にかかる費用
2型糖尿病で血糖コントロールが難しくなると、インスリン注射による治療が必要になることがあります。インスリン療法を新しく導入すると、注射の手技や血糖自己測定の方法を身につけるための指導が行われ、最初の3か月は「導入初期加算」という費用が上乗せされます。導入初期加算とは、注射や測定を新しく始めた患者さんに向けて、手技を確実に習得できるよう手厚く指導した際に算定される加算のことで、たとえるなら「使い方を覚えるための特別レッスン料」のようなものです。
症状によっては、数日から1週間程度の教育入院を勧められることもあります。入院した場合は別途、入院基本料や食事代がかかりますが、高額療養費制度の対象になるため自己負担には上限が設けられます(後述)。外来だけで導入する場合は、以下の費用が目安になります。
■ クリニックでかかる費用(導入初期・外来の場合)
■ 診察料・在宅自己注射指導管理料・月の目安(3割負担):2,000〜2,500円
・備考:月28回以上の注射の場合(1日1回以上)
■ 導入初期加算
・月の目安(3割負担):約1,700円
・備考:最初の3か月・月1回のみ
■ 血糖自己測定器加算
・月の目安(3割負担):1,000〜3,500円
・備考:測定回数により変動
■ 血液検査・尿検査
・月の目安(3割負担):1,000〜3,000円
・備考:導入時は確認のため頻回
■ 合計目安
・月の目安(3割負担):約6,000〜10,500円/月
・備考:-
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
■ 薬局でかかる費用(導入初期)
■ 調剤料・月の目安(3割負担):400〜800円
・備考:その都度発生
■ インスリン製剤
・月の目安(3割負担):3,000〜6,000円
・備考:種類・単位数により変動
■ 注射針・アルコール綿等
・月の目安(3割負担):500〜1,500円
・備考:注射針は保険算定(C153加算)・アルコール綿等は医療機関からの給付または実費購入となる場合があります。
■ 合計目安
・月の目安(3割負担):約4,000〜8,500円/月
・備考:-
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
※インスリン製剤の費用は、選ぶ薬剤(先発品、バイオシミラー)と療法(1日1回のBOTか、1日3〜4回の強化療法か)で大きく異なります。BOT(持効型を1日1回)の場合は月500〜1,000円程度、強化療法で先発品の場合は月5,000円前後になることもあります。
導入初期は、指導管理料に加えて導入初期加算や頻回の血糖測定が重なるため、クリニックと薬局を合わせて月10,000円〜19,000円程度になることが多いです。この期間を過ぎると通院や測定の頻度が落ち着き、費用もやや下がる傾向があります。
治療が安定してからの月々の費用
血糖コントロールが安定してくると、通院間隔が延び、導入初期加算もなくなるため、月々の費用は導入期より抑えられます。ただし、インスリンの使い方には大きく分けて2つのタイプがあり、費用の目安も変わってきます。1日1回、持効型インスリンを打つだけの「BOT療法(経口薬併用インスリン療法)」と、食事のたびに速効型インスリンを追加し、1日3〜4回注射する「強化インスリン療法」です。注射回数が増えるほど、血糖自己測定器加算や薬剤費が上がる仕組みになっています。
■ 安定期のインスリン療法:BOT療法と強化インスリン療法の比較
■ 注射回数の目安・BOT療法(1日1回):1日1回
・強化インスリン療法(1日3〜4回):1日3〜4回
■ 在宅自己注射指導管理料
・BOT療法(1日1回):約2,250円
・強化インスリン療法(1日3〜4回):約2,250円
■ 血糖自己測定器加算
・BOT療法(1日1回):約1,050〜1,400円
・強化インスリン療法(1日3〜4回):約3,500〜4,500円
■ インスリン製剤・経口薬
・BOT療法(1日1回):約3,000〜6,000円
・強化インスリン療法(1日3〜4回):約6,000〜10,000円
■ 月の自己負担合計目安
・BOT療法(1日1回):約8,000〜11,000円
・強化インスリン療法(1日3〜4回):約14,000〜19,000円
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
なお、月の自己負担合計目安には、上記のほかに診察料・調剤料・注射針加算などの費用を含んでいます。
持続血糖測定器(CGM)を使う場合は、血糖自己測定器加算に代えて、間歇スキャン式のセンサー代が月あたり約3,750円算定されることがあります。CGMは、指先からの採血をせずに血糖の変化を自動で記録できる機器で、たとえるなら「血糖の動きを24時間録画してくれるカメラ」のようなものです。注射の回数が多い方ほど、CGMによって測定の手間や痛みを減らせるメリットがあります。

