「薬を飲み続けているけれど、この治療費はいつまで続くのだろう」「難病と言われたけれど、医療費はどのくらい助成されるのだろう」といった不安を感じている方は少なくないのではないでしょうか。潰瘍性大腸炎は10代後半から30代の若い世代に発症することが多く、症状が落ち着いた後も治療が長期にわたることが多いため、月々どれくらいの費用がかかるのかを早めに知っておくことは、治療を続けていくうえでも、家計管理のうえでもとても重要です。この記事では、診断後、外来で安定期を迎えたときにかかる費用の目安と、自己負担を大きく減らせる難病医療費助成制度の使い方について、3割負担を基準に解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
事務長さぽーと株式会社代表取締役
加藤隆之(中小企業診断士・MBA)
診断後、外来で安定期を迎えたときにかかる費用の目安
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)は大腸の粘膜に炎症やびらん・潰瘍ができる原因不明の病気で、国の指定難病(していなんびょう)97番です。診断直後は症状を抑える「寛解導入療法」が中心になりますが、落ち着いた後は再燃を防ぐ「寛解維持療法(かんかいいじりょうほう)」を続けながら、数か月に1回のペースで通院を続けるのが一般的です。
安定期の外来では、診察のほか血液検査や大腸内視鏡検査などが定期的に行われます。2026年6月1日施行の診療報酬改定(しんりょうほうしゅうかいてい)では再診料が75点から76点に、「物価対応料(ぶっかたいおうりょう)」という加算が2点新設されました。1点10円のため、3割負担の窓口負担はこれまでより数円〜十数円程度増える計算です。
■ 安定期の外来でかかる費用の目安(3割負担)
■ 再診料+物価対応料+外来管理加算・頻度の目安:受診のたび
・3割負担の目安:約380円
■ 血液検査(炎症・貧血の確認)
・頻度の目安:1〜3か月に1回
・3割負担の目安:1,200〜3,000円程度
■ 大腸内視鏡検査
・頻度の目安:半年〜1年に1回
・3割負担の目安:6,000〜15,000円程度
■ 5-ASA製剤(院外処方の薬代)
・頻度の目安:毎日服用
・3割負担の目安:1,000〜6,500円程度/月
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
維持療法の中心となるのは5-ASA製剤(ごーえーえすえーせいざい)と呼ばれる薬で、メサラジンやサラゾスルファピリジンといった成分の薬があります。たとえば1か月分の薬剤費が10,000円(10割)なら、3割負担の窓口負担は3,000円になる計算です。
症状の程度によって費用はどう変わる?
治療費は症状の重さによって大きく変わります。軽症は5-ASA製剤の内服・注腸・坐剤だけで安定することが多い一方、中等症はステロイドや免疫調節薬を併用し、重症化すると生物学的製剤(せいぶつがくてきせいざい)と呼ばれる注射薬・点滴薬が必要になることがあります。
■ 軽症(寛解維持期)・主な治療内容:5-ASA製剤の内服・注腸・坐剤
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約3,000〜10,000円程度
■ 中等症
・主な治療内容:5-ASA製剤+ステロイド・免疫調節薬
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約5,000〜20,000円程度
■ 重症
・主な治療内容:生物学的製剤(点滴・自己注射)
低分子化合物/分子標的薬(飲み薬)の導入
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約11,000〜100,000円以上
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
5-ASA製剤やステロイド治療では十分な効果が得られない場合や、ステロイドの減量や中止で再燃する中等症〜重症の場合に対して「アドバンストセラピー(高度先進分子標的治療)」が用いられます。アドバンストセラピーの種類は、大きく分けて「生物学的製剤(点滴・自己注射)」と「低分子化合物/分子標的薬(飲み薬)」の2つに分類されます。
■生物学的製剤(点滴・自己注射)
■ 抗TNF-α抗体製剤・代表的な薬剤:インフリキシマブ、ゴリムマブ、アダリムマブ など
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約5,700〜65,000円程度(体重により変動あり)
■ 抗インテグリン抗体製剤
・代表的な薬剤:ベドリズマブ など
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約40,000円程度
■ 抗IL-12/23抗体製剤
・代表的な薬剤:ウステキヌマブ、リサンキズマブ、ミリキズマブ、グセルクマブ など
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約19,000〜40,000円程度
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
■低分子化合物/分子標的薬(飲み薬)
■ JAK阻害薬・代表的な薬剤:トファシチニブ、フィルゴチニブ、ウパダシチニブなど
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約18,000〜100,000円程度
■ S1P受容体モジュレーター
・代表的な薬剤:オザニモド、エトラシモドなど
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約36,000〜45,000円程度
■ α4インテグリン阻害薬
・代表的な薬剤:カロテグラストメチル (導入療法限定・最大6か月)
・月額の目安(3割負担・助成適用前):約43,000円程度
※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。
※なお、カロテグラストメチルは中等症の潰瘍性大腸炎に対する導入療法にのみ用いられ、維持療法としては使用されません(投与期間は最大6か月)。
生物学的製剤や低分子化合物/分子標的薬は、1回の投与だけで薬価が数万円〜十数万円になることも珍しくありませんが、潰瘍性大腸炎は指定難病のため、後述する難病医療費助成制度を利用すれば、薬の値段にかかわらず自己負担は所得に応じた上限額までに抑えられます。

