●統計にも表れない「なりすまし」被害
なりすまし被害が全国でどれだけ起きているのか。それを直接示す公的な統計はない。
法務省の人権擁護機関が2025年、インターネット上の人権侵害情報をめぐって新たに救済手続きを始めた人権侵犯事件は1569件だった。
総務省が委託する違法・有害情報相談センターへの相談は、2024年度に6403件。10年余りで約4.8倍に増えた。
しかし、いずれの統計にも「なりすまし」という独立した項目はない。
プライバシー侵害や名誉毀損といった既存の分類の中に埋もれているとみられる。
今回のなりすましに、生成AIは使われていなかった。本人が実際に公開していた写真の中から、男性の関心を引きそうなものを選び、一枚ずつ文言を付ける。いわば「手作業」だった。
だが、今は状況が違う。
相手の写真から、本人が実際には撮影していない性的な画像を生成することも技術的には容易になった。SNSや卒業アルバムなどに掲載された顔写真をもとに、若い女性たちが「ディープフェイク」の標的となる被害も問題となっている。
他人になりすますための材料を集め、偽物を作り上げる手間は、この5年で劇的に減った。
平尾さんは現在、自らの被害についてSNSで発信を続けている。
本名と顔を出して取材を受ける理由を、こう語った。
「私は何も悪いことをしていないからです。自分は名前も顔も隠したまま、他人の本名や顔や私生活をさらし、人生を壊せる現在の仕組みには強い不公平を感じます。失った生活を取り返すことが一番の望みです」

