「熱中症」は”血液検査”の何が分かるかご存じですか?対処法も医師が解説!

「熱中症」は”血液検査”の何が分かるかご存じですか?対処法も医師が解説!

熱中症は血液検査で調べられる?メディカルドック監修医が特徴的な数値の変化や、炎症反応・臓器への影響、対処法や予防法について解説します。

この記事のまとめ

・熱中症は血液検査だけで診断できる病気ではなく、暑い環境にいた状況や症状、体温、意識状態などを総合して診断されるが、血液検査は脱水や電解質異常、臓器障害の有無を確認し重症度や治療方針を判断するために行われる。

・ヘモグロビン・ヘマトクリットで脱水の程度を、ナトリウム・クロール・カリウムで電解質バランスを、尿素窒素・クレアチニンで腎機能を評価するなど、複数の項目を組み合わせて体の状態を把握する。

・重症例では、AST・ALT・LDHで肝機能や細胞障害を、CKで筋肉の障害(横紋筋融解症)を、白血球・CRP・血小板で炎症反応や凝固異常(DICなど)を評価し、多臓器への影響を確認する。

・熱中症が疑われたら涼しい場所へ移動し、体を冷やしながら水分・塩分を補給することが基本の対処法だが、意識障害やけいれんがある場合は直ちに救急車を呼ぶ必要がある。

・予防には、のどが渇く前からの水分補給や適度な塩分摂取、WBGT(暑さ指数)を目安にした外出・運動の調整、暑熱順化などが重要であり、高齢者や持病のある方は特に注意が必要である。

藤井 弘敦

監修医師:
藤井 弘敦(医師)

三重大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修、河北総合病院で外科研修を経て現在は菊名記念病院で心臓血管外科医として日々手術・重症者管理を行っている。医療用アプリの開発や在宅診療、海外で医療ボランティアを行うなど幅広く活動している。外科専門医、腹部ステントグラフト実施医/指導医、胸部ステントグラフト実施医、米国心臓病学会ACLSプロバイダー、日本救急医学会JATECプロバイダーの資格を有する。

熱中症とは?暑い夏に注意したい健康障害

熱中症とは?暑い夏に注意したい健康障害

熱中症は、暑さで体温をうまく調節できず、体に熱がこもって起こるさまざまな健康障害の総称です。人の体温は通常、一定に保たれるよう調節されています。体は、皮膚の血管を広げて熱を逃がしたり、汗が蒸発するときに熱を奪ったりすることで体温を調整しています。しかし、暑い環境に長時間いたり、激しい運動をしたりすると、この体温調節機能が追いつかなくなり、体内に熱が蓄積して体温が異常に上昇します。さらに大量に汗をかくと、水分と塩分(電解質)が失われ、脱水が進みます。その結果、めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、頭痛、吐き気などの症状が現れることも少なくありません。重症になると、高体温や脱水の影響で脳・腎臓・肝臓・筋肉など全身の臓器や、血液を固める仕組み(凝固機能)にも障害が及び、命に関わることがあります。熱中症は炎天下だけでなく、曇って蒸し暑い日や風通しの悪い室内、夜間にも起こります。特に高齢者や乳幼児、持病のある方は、自覚しないうちに脱水や体温上昇が進み、重症化することがあるため注意が必要です。

熱中症になるとどんな症状が現れる?

熱中症の症状は、軽いめまいから命に関わる状態まで幅広く、必要な対応も異なります。重症度はⅠ度からⅣ度の4段階で評価します。

Ⅰ度(軽症):めまい、立ちくらみ、生あくび(何度もあくびが出る)、大量の汗、筋肉痛、こむら返り(足がつる)。意識がはっきりして自分で水を飲めれば、涼しい場所へ移り、体を冷やしながら水分・塩分を補給する。

Ⅱ度(中等症):頭痛、吐き気や嘔吐、だるさ、集中力・判断力の低下。十分に水分を摂れないこともあり、病院での診察や点滴が必要になる場合がある。

Ⅲ度(重症):意識がもうろうとする、けいれん、まっすぐ歩けないなどの脳・神経症状、肝臓や腎臓の障害、血液が固まりにくくなる異常。入院して全身を管理し、積極的な冷却が必要。

Ⅳ度(最重症):体の中心部の温度(深部体温)が40.0℃以上で、意識障害を伴う極めて危険な状態。一刻も早く全身を冷やす集中的な治療が必要。

「日射病」と「熱射病」は、いずれも従来の呼び方で、現在は「熱中症」として統一されています。「日射病」は、強い直射日光によって起こる熱中症を指す言葉でした。一方、「熱射病」は、日差しの有無にかかわらず(室内でも起こり得ます)、異常な高体温や意識障害などを伴う重症の熱中症を指し、現在の重症度分類ではⅢ、Ⅳ度に相当します。

夏に熱中症が増える原因は?気温以外にも注意

熱中症は、気温の高さだけでなく、「環境」と「体の状態」が重なることで起こりやすくなります。環境側の主な要因は次のとおりです。

高い気温・湿度

強い日差し

弱い風

地面からの照り返し

湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体から熱を逃がしづらくなります。一方、体側の主な要因は次のとおりです。

激しい運動や肉体労働

睡眠不足

二日酔い

発熱や下痢などの体調不良

水分不足

特に注意したいのは、梅雨明け直後や急に暑くなった日など、暑さに慣れていない時期です。暑い環境を繰り返し経験すると、汗をかきやすくなるなど徐々に適応します。これを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。普段涼しい場所で過ごす人が急に屋外で長時間活動すると、同じ気温でも熱中症になりやすくなります。

水分不足だけじゃない!熱中症になりやすい人の特徴とは?

熱中症は、水分不足だけではなく、年齢、持病、薬、生活環境、暑さへの慣れなども影響します。高齢者は体温調節機能が低下し、暑さやのどの渇きを感じにくいため、室内でも気づかないうちに脱水や高体温が進むことがあります。乳幼児も体温調節機能が未発達で、背が低いため地面からの照り返しを強く受けます。心臓病、糖尿病、腎臓病、高血圧、精神疾患などの持病がある方も注意が必要です。利尿薬や降圧薬、抗精神病薬、抗うつ薬など一部の薬は、水分・電解質のバランスや体温調節に影響します。心配な場合は、かかりつけ医に相談しましょう。エアコンを使わない、一人暮らしで異変に気づかれにくい、普段は涼しい場所にいるのに時々屋外で作業やスポーツをする、といった状況も発症リスクを高めます。

血液検査で熱中症による異常が現れる項目と数値

血液検査で熱中症による異常が現れる項目と数値

熱中症は血液検査だけで診断できる病気ではありません。診断は、暑い環境にいた状況や症状、体温、意識状態、診察所見などを総合して行います。血液検査は、脱水や電解質異常、腎臓・肝臓・筋肉への障害の有無を確認し、重症度や治療方針を判断するために行われます。軽症で診断が明らかな場合は、血液検査を行わないこともあります。一方、血液検査を行っても、発症直後には異常が現れないことがあり、正常だからといって熱中症を否定することはできません。熱中症では、脱水や高体温による臓器障害の影響で、さまざまな血液検査項目に異常が現れます。どの項目が変化するかは重症度や病態によって異なりますが、電解質、腎機能、肝機能、筋障害を示す項目を中心に評価します。以下では、代表的な血液検査項目とその特徴を解説します。

ヘモグロビン(Hb)・ヘマトクリット(Ht):脱水・血液濃縮の評価

大量の汗や水分不足で血液中の水分が減ると、血液が相対的に濃くなる「血液濃縮」が起こります。ヘモグロビン(Hb)やヘマトクリット(Ht)の数値が高くなり、脱水の手がかりとなることがあります。ただし、貧血や出血、持病などでも変化するため、HbやHtだけで判断せず、血圧、脈拍、尿量、腎機能などと合わせて評価しなければなりません。

ナトリウム(Na)・クロール(Cl)・カリウム(K):電解質バランスの評価

汗は、水分だけでなくナトリウムやクロールなどの電解質も失われます。熱中症では、水分と塩分の失われ方や補給方法により、血中ナトリウムが高くも低くもなるため注意が必要です。水分不足では高ナトリウム血症、大量発汗後に水だけを飲みすぎると低ナトリウム血症になることがあります。カリウムも、発汗や腎臓・筋肉の障害で変化します。異常は脱力や不整脈の原因になるため、特に中等症以上では重要な項目です。

尿素窒素(BUN)・クレアチニン(Cre):腎機能の評価

脱水により循環血液量が減少すると腎臓への血流も低下し、尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cre)が上昇することがあります。これらの上昇は、脱水や急性腎障害を示す重要な所見です。また、重症例では横紋筋融解症などに伴って急性腎障害を生じ、クレアチニンがさらに上昇することがあります。

配信元: Medical DOC

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