熱中症に対する対処法と予防法

熱中症が疑われたら、まず「意識は正常か」「自力で安全に水分を飲めるか」を確認します。軽症なら適切な対応で回復することもありますが、意識障害があれば一刻も早い救急対応が必要です。
応急処置:涼しい場所への移動・冷却・水分と塩分の補給
まず冷房の効いた室内や涼しい日陰へ移動し、衣服をゆるめ、余分な服を脱がせて熱を逃がします。意識がはっきりしており、安全に飲める場合は、水分と塩分を補給しましょう。大量に汗をかいた場合や脱水が疑われる場合は、経口補水液が適しています。日常的な塩分補給には、0.1〜0.2%の食塩水や、ナトリウム40〜80mg/100mLを含むスポーツドリンクなどを、少量ずつこまめに飲むことが推奨されています。冷却には、皮膚を水でぬらして風を当て、「気化熱」を利用する方法が効果的です。冷たすぎる水は皮膚の血管を縮め、熱を逃がしにくくすることがあるため、ぬるめのお湯(40℃くらい)を霧吹きでかけ、風を送ります。首、わきの下、脚のつけ根を保冷剤や氷で冷やす方法も有用です。市販の解熱薬で熱中症の高体温を下げようとするのは避けましょう。かぜなどに使う解熱薬の有効性は確認されておらず、種類によっては肝臓や腎臓に負担をかけます。
受診の目安と医療機関での治療
受け答えがおかしい、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんしているなど意識障害がある場合は、直ちに救急車を呼んでください。一方、自分で十分に水分を摂れない、嘔吐を繰り返す、症状が改善しない、尿が極端に少ない、筋肉痛や茶色っぽい尿がみられる場合も、早めの受診が必要です。病院では、問診や診察、体温測定に加え、必要に応じて血液検査や尿検査を行い、脱水や電解質異常、腎臓・肝臓・筋肉の障害、炎症反応、凝固異常などを評価します。その結果に応じて点滴や全身の冷却などの治療を行い、重症例では急性腎障害や肝障害、DICなどに対する集中治療が必要になることもあります。判断に迷う場合や症状の悪化が心配な場合は、救急安心センター事業(#7119)に相談し、専門家の指示を仰ぐこともできます。
日常の予防法
熱中症予防の基本は、暑さを避け、適切に休憩し、のどが渇く前から水分を補給することです。日常生活では、食事で塩分を適度に摂ることを基本とし、汗を多くかく場面ではスポーツドリンクなどを活用するとよいでしょう。長時間の運動や屋外作業などで大量に汗をかく場合は、経口補水液も選択肢となります。暑さの目安にはWBGT(暑さ指数)が参考になります。WBGTは気温だけでなく湿度や日射、照り返しを反映した指標で、28以上31未満は「厳重警戒」、31以上は「運動は原則中止」が目安です。日最高WBGTが33以上と予測されると熱中症警戒アラート、さらに危険な暑さが予測されると特別警戒アラートが発表されるため、外出や運動、屋外作業の中止・延期も検討しましょう。本格的な夏の前から、無理のない運動や入浴で体を暑さに慣らす暑熱順化も有用です。また、運動や作業前に冷たい飲み物やシャーベット状の飲み物で体を冷やすことも予防に役立ちます。屋外活動では、日傘や帽子に加え、空調服(ファン付きウェア)も暑さ対策の補助として利用できます。近年は、心拍数などを確認できるスマートウォッチも、熱中症対策の補助として活用されるようになっています。ただし、機器だけに頼らず、職場やスポーツでは二人一組で体調を確認し合い、異変があれば速やかに休むことが重要です。
「熱中症と血液検査」についてよくある質問

ここまで熱中症と血液検査について紹介しました。ここでは「熱中症と血液検査」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
熱中症になると体内の血液にはどのような変化が起きるのでしょうか?
藤井 弘敦(医師)
大量の汗や水分不足で血液が濃くなり、ヘモグロビン(Hb)やヘマトクリット(Ht)が相対的に高くなることがあります。水分と塩分の失われ方により、ナトリウムやカリウムなどの電解質も変化します。重症では、BUN・クレアチニン、AST・ALT・LDH、CK、白血球・CRPが上昇し、血小板低下や凝固異常がみられることもあります。
病院で熱中症かどうかを診断するときはどんな検査が行われますか?
藤井 弘敦(医師)
熱中症は一つの検査で確定できず、暑い環境にいた状況、症状、意識状態、体温、診察から総合的に診断します。必要に応じて血液・尿検査を行い、脱水、電解質、腎臓・肝臓・筋肉、炎症反応、凝固機能を確認します。重症では深部体温の測定も重要です。
血液検査の数値で熱中症のかかりやすさや注意度はわかりますか?
藤井 弘敦(医師)
血液検査だけで、熱中症のかかりやすさを判断することはできません。ただし、腎機能や血糖値などから持病の有無や全身状態を把握することで、熱中症に注意が必要な方を見極める参考にはなります。腎機能低下や糖尿病、心臓病・腎臓病のある方、一部の利尿薬や降圧薬を服用している方は、脱水や体温調節の影響を受けやすいため注意が必要です。暑い時期は、血液検査の結果だけで安心せず、体調や尿量、水分摂取量、室温などもあわせて確認しましょう。

