SNS発信が拓く外科医療の未来——消化器外科医5人が語る情報発信術

SNS発信が拓く外科医療の未来——消化器外科医5人が語る情報発信術

組織や大学、学会における情報発信の手段として、SNSの活用はすでに当然となりつつあります。なり手不足が課題とされる消化器外科領域でも、SNSをいかに活用するかは大きなテーマです。2026年7月15日、パシフィコ横浜で開催された第81回日本消化器外科学会総会にて、特別企画として「消化器外科×SNS最前線 ― 私たちの未来を変える有効活用術」が行われました。学会・学会誌の公式アカウント運用から手術トレーニング動画、手術イラスト、大学医局のInstagram運用まで、SNSでの情報発信に積極的な5人の演者が具体的な実践方法と成果を報告しました。医療情報におけるSNS活用法の最前線をお伝えします。


学会公式英文誌のX運用で情報発信力の強化へ

学会公式英文誌のX運用で情報発信力の強化へ

 

京都大学消化管外科の山本健人先生は、日本消化器外科学会が2024年、広報委員会内に「SNSプロフェッショナルワーキング」を設立し、Xにおける日本語アカウント「日本消化器外科学会」と、学会公式英文誌に特化した英語アカウント「Annals of Gastroenterological Surgery(AGSurg)」の運用を開始したと紹介しました。英語アカウントは先日1000フォロワーを達成し、日本語アカウントも2000フォロワー到達が見えてくるなど、情報発信力が育ってきています。公式組織アカウントのフォロワーが増えにくいとされるXのアルゴリズムの中では、特筆すべき成果です。

海外では学会誌や国際学会の英語発信がすでに10年以上前からスタンダードとなっており、著名な外科系ジャーナルでは、論文投稿時にSNSアカウント名が記入されていたり、閲覧数上位の論文を図表とともに紹介したりする取り組みは一般的に行われています。そのためAGSurgの運用でも、閲覧数ランキングやビジュアル・アブストラクトの導入、全論文の要約投稿を実践してきたといいます。AGSurgアカウントのフォロワーの8割以上は海外の医師ですが、AGS誌読者の国籍は2025年時点で日本が36%と最多です。

また山本先生は京都大学を中心とした8大学共同研究で医学生1515人を対象に調査した結果にも触れ、最も使われているSNSプラットフォームはYouTube、次いでInstagram、Xと続いて多かった一方、Facebookはわずか1.9%だったと紹介しました。ターゲットがどのプラットフォームを使用しているかを把握する必要があるとの考えから、消化器外科学会は2026年7月、公式Instagramの運用も新たに開始し、SNS活用をより一層推進しているといいます。

「腹腔鏡で折鶴作成」!? 外科手術トレーニングをXで投稿し、全国の医師と交流

「腹腔鏡で折鶴作成」!? 外科手術トレーニングをXで投稿し、全国の医師と交流

 

岐阜大学消化器外科・小児外科の畑中勇治先生は、X上で5年間、手術トレーニングの様子を発信し続けています。きっかけは手術症例数が限られた病院での勤務経験でした。同年代の医師も少なく、外科手技に関する情報収集や人脈形成、ほかの医師からのフィードバックを求めてSNS発信を始めたといいます。

なかでも折鶴を腹腔鏡下で作るトレーニング動画は、「いいね」が11万件に達する大きな反響を呼び、メディアにも取り上げられました。この経験から畑中先生は、手術トレーニング動画が一般外科手技の啓発や、外科領域への関心を引くコンテンツとして有用であると実感し、以降も腹腔鏡下でのさまざまな練習動画を発信してきたと語ります。

アカウント上で多くの医師からコメントやアドバイスを受け取るようになり、「良い動画を撮らなければという目的意識が、高いモチベーションでのトレーニング継続につながった」と振り返ります。学生や研修医からの質問を受ける機会も増え、現在は大学での学生・研修医教育にも携わっています。こうしたつながりは、2022年の第77回日本消化器外科学会総会シミュレーション選手権、そして2025年のWCES(世界内視鏡外科会議)におけるMIS(低侵襲手術)チャンピオンシップでの優勝という実績にも結びつきました。

このほか、全国若手外科医の会のLINEグループ(148人)を対象に実施した独自アンケートの結果も紹介されました。有効回答55件のうち、SNS上の手技動画を見て学ぶというインプット目的での活用は回答者全員が経験している一方、自ら発信するアウトプットの経験者は12人(22%)にとどまりました。畑中先生は、回答者がSNSに親和的な層に偏っている可能性に触れたうえで、発信の一歩を踏み出す意義を強調しました。

配信元: Medical DOC

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