肝胆膵外科学会公式Xの運用からみる「世界に向けたSNS活用」
千葉大学臓器制御外科学の西野仁惠先生は、日本肝胆膵外科学会広報委員会の委員として、2023年に開始されたX公式アカウントの運用に携わり、約3年半でフォロワー3000人を超えた取り組みを報告しました。「IHPBA(国際肝胆膵学会)のフォロワー数1万人には及ばないものの、一国の学会アカウントとしては一定の認知を得られている」とSNS活用の手応えを説明します。
同学会の広報委員会がSNS活用で重視したのは、広報の目的を「国際的認知度の向上」の1点に絞ることでした。投稿はすべて英語とし、最低週1回のペースで発信を継続しました。
運用面についてはコメント欄を開放し、他団体や個人投稿も肝胆膵外科領域に有用な情報については積極的に再投稿するなど、情報発信だけでなく交流の場としての運用を大切にしています。投稿担当も週替わりの交替制にするなど、「SNS疲れ」を避けて継続できる体制づくりを重視しています。
また、SNS拡散の起点として注目・実践したのが、関連学会やSNS上で影響の大きい海外外科医のタグ付けでした。フォロワー100人のアカウントの投稿でも、1万人規模の関連学会に再投稿されれば、より多くの人の目に触れます。また海外の医師の間では、学会発表や論文をSNSで積極的に発信し、研究成果の普及やキャリア形成につなげる文化が根付いています。日本と比べ、発表中の写真やスライドの共有にも前向きな傾向があります。西野先生は、こうした文化の違いを理解しながら発信戦略を考えることが重要であると説明しました。
なお、同学会の学術集会は完全に英語化されており、海外参加者は全体の10%以上を占めていることも併せて説明がありました。
手術イラストをSNSで発信するコツ、「小腸ペン」のバズりとその先にあるもの
京都大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科の石田叡先生は、2020年、新型コロナウイルスの流行で手術件数が減少したことをきっかけにInstagramでの手術記録イラストの投稿を開始し、その後Xでも発信するようになりました。現在、両アカウントの総フォロワー数は4000人弱に上ります。
SNS投稿は発信の土台となるコンセプトが重要です。石田先生は自己研鑽が出発点であり、教わった手技の記録や将来の後輩指導への活用を目的に始めました。ターゲットは同世代の若手医師やメディカルスタッフで、ゆくゆくは患者さんにも届くよう、アカデミックになりすぎない投稿を心がけてきたといいます。
手術イラストはビジュアル中心のInstagramと親和性が高く、なかでも外科医が描く手術イラストはSNS上では希少かつ魅力的なビジュアルコンテンツになります。石田先生はインサイト機能で投稿の分析を行っており、「いいね」の数より「保存数」に注目することの重要性を挙げました。手術手順を解説する投稿は後から見返す対象になりやすく、保存数が伸びやすい傾向にあると分析します。
また、石田先生は自身が考案した「小腸ペン」とその反響についても紹介しました。これはイラストアプリのブラシ設定によりリアルな3Dの小腸を一筆書きで描けるというデジタルツールです。X上に投稿したところ、24時間で1300万インプレッションを記録。この大反響をきっかけに、周囲に自身のSNS活動が認知され、様々な学会・論文発表の挿絵の依頼を受けるようにもなりました。
発信が広がっている実感を得るには、投稿を分析しながら工夫を重ねることが欠かせません。その積み重ねの先で、SNSでの発信は学術活動を補完し得るものになる――石田先生はそう締めくくりました。

