マネ《オランピア》──彼女の視線は居心地が悪い。

見られる側から、見る側へ

この絵にはもう一つの物語が隠れています。モデルを務めたのは、ヴィクトリーヌ・ムーランという女性でした。

エドゥアール・マネ《ヴィクトリーヌ・ムーランの肖像》(1862年頃)。油彩・カンヴァス、42.9×43.8cm。ボストン美術館蔵。《オランピア》のモデルを務め、のちに自らも画家となった。, Public domain, via Wikimedia Commons.

十代から絵のモデルを始め、長く「見られる側」にいた人物でした。ところが彼女はこのあと自ら絵筆を取り、画家としてマネと同じサロンに作品を出すまでになります。

見られる側だった女性が、描く側へ回ったのです。そう考えると、こちらを射抜くようなあの視線が、少し違って見えてこないでしょうか。彼女が向けていたのは、挑発的なまなざしだけではなかったかもしれません。

やがて画家として歩み出した彼女の瞳には、自分の人生を自らの手で切り拓くという強い決意が宿っているようにも感じます。

目の前にいる裸の女性を、あなたはどう見るのか。人々を怒らせた一枚は、今もなお私たちを試し続けているのです。

配信元: イロハニアート

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