映画『We Margiela マルジェラと私たち』で知る、「型破り」でも愛される理由

映画『We Margiela マルジェラと私たち』と「型破り」への熱狂

参照:『We Margiela マルジェラと私たち』

2019年に公開された映画『We Margiela マルジェラと私たち』は、ファッションブランド「メゾン・マルタン・マルジェラ」の創設者でデザイナーだったマルタン・マルジェラについて、共同創設者のジェニー・メイレンスをはじめ、数々の関係者が振り返るというドキュメンタリーです。

貴重なアーカイブ映像や証言から、名作の誕生秘話、マルジェラが匿名性を重視した理由、チームを象徴する「私たち」という単語の真意など、ファッション史に革命を起こした舞台裏が明かされていきます。

こちらの記事では、映画『We Margiela マルジェラと私たち』の概要をより詳しくご紹介しています。

ファッションもアートだ!シャネル、マルジェラ、ディオールを映画で堪能しよう

目次『ココ・アヴァン・シャネル』(2009年)シャネルは、制約から解放されたワードローブを世に送り出し続ける『We Margiela マルジェラと私たち』(2019年)たくさんのランウェイにまだマルタ…

映像に刻まれたブランドの歩みは、ファッションという枠を超え、わたしたちの心を揺さぶります。それではなぜ、彼らの生み出す「型破り」は熱狂的に愛されているのでしょうか?

マルジェラのファッションにおけるキーワードは「脱構築」

2005年秋冬 メゾン・マルジェラ「アルティザナル」ジャケット、ヴィンテージ・ツイード地にクレープの包帯風素材をあしらったもの, Public domain, via Wikimedia Commons.

1977年、マルタン・マルジェラはアントワープ王立芸術学院に入学しました。意外かもしれませんが、そこで日本人デザイナーたちに影響を受けたといわれています。川久保玲の「コム・デ・ギャルソン」、山本耀司の「ヨウジヤマモト」、三宅一生の「Issey Miyake」。彼らの精神を継承し、アントワープでは創造性を重視した教育に力を入れていたからです。

1980年に学院を卒業すると、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタントを経て、1988年に「メゾン・マルタン・マルジェラ」を創設しました。その根底には「既成概念にとらわれない」という思想があり、「脱構築(ディコンストラクション)」と評されています。

もともと脱構築とは、フランスの哲学者ジャック・デリダによって提唱されました。簡潔にまとめると「意味は常に再解釈され、決して固定されたものにはならない」という考え方です。ただ、ファッションにおける脱構築は、シンメトリー(左右対称)や均衡を崩した服や、未完成な服など、形状の特徴を指すことが多いとされています。つまり「服とは何か?」を問い直すということです。

マルジェラは流行に対して批判的な視点を持っており、その作風は「アンチモード(反モード)」と呼ばれています。そして、最新の流行を発信し続ける「パリモード」、デザイナーを神聖化することで成立するブランドビジネス、次々に衣服を使い捨てる消費社会から距離をとろうとしてきました。

例えば1991年秋冬に発表された「ミリタリーソックス」は、古着の靴下を解体し、ハイネックニットとして再び蘇らせました。しかし、大量の靴下を買い集めて仕立てるという試みは、アトリエにとって難易度の高いものでした。

リサイクル品を集め、ひとつひとつ手作業で仕立てるため、形が整っていなかったり、ディテールが未完成だったりする上、手間もかかります。それでも生産過剰の既存商品に第二の人生を与えたのは、有効利用だけが目的ではなく、「まだ美しさを秘めている」という考えに基づいていました。

配信元: イロハニアート

提供元

プロフィール画像

イロハニアート

最近よく耳にするアート。「興味はあるけれど、難しそう」と何となく敬遠していませんか?イロハニアートは、アートをもっと自由に、たくさんの人に楽しんでもらいたいという想いから生まれたメディアです。現代アートから古美術まで、アートのイロハが分かる、そんなメディアを目指して日々コンテンツを更新しています。