「私たち」は、遊ぶように真剣に仕事を突き詰める
2005年秋冬 メゾン・マルジェラ「アーティザナル」トップス、ナイロンストッキング製 03, Public domain, via Wikimedia Commons.
「メゾン・マルタン・マルジェラ」は、天才デザイナーのカリスマ性だけで唯一無二になったわけではありません。まだアンダーグラウンドで知名度が低かった時期、創業者2人のビジョンとアイデアに共鳴した仲間たちがいたからこそ、メゾンの基盤は築かれました。
最初のショーに向けて費やした約1年。夜のストリートキャスティング。翌日の支払いすらままならない破産寸前の危機。そうした日々を、彼らは熱狂的な連帯感で乗り越えていったそうです。
現在「ドリス ヴァン ノッテン」の社長を務めているアクセル・ケラー氏は、コマーシャル・ディレクターだった当時を振り返り、「半端な気持ちで働くことはあり得なかった」と語ります。その現場はまるで、アンディ・ウォーホルの「ファクトリー」のようだったかもしれません。スタッフたちが誇りを持って仕事場を守り、マルジェラのアイデアを実現した結果、伝説的な熱狂を生み出すことができたのでしょう。
マルジェラの型破りなアイコン「タビ」
そんなチームの努力が結実したものとして、スプリットトゥシューズ「タビ」があります。1989年の初コレクションで登場して以来、今なお愛され続けている名作です。日本の足袋からインスピレーションを得て制作され、コレクションごとに素材や形を変えながら再解釈され続けています。
伝統的なワークウェアにシリンダーのヒールを組み合わせたブーツは、当時のファッション界に衝撃を与えました。ソールを赤く塗り、モデルが白いランウェイを歩くたびに足跡が残るという演出も面白かったようです。しかし、あまりに前衛的なデザインだったため、感動で涙を流す人がいた一方、激しく嫌う人もいたといわれています。
しかし、この独創性こそがマルジェラらしさになったのではないでしょうか。美しさの固定観念に縛られないタビは、既成概念に囚われない生き方を象徴する、メゾンきっての名作になっています。
