【クローン病の治療費】毎月の注射代が払えない?リアルな治療費と難病の医療費助成

【クローン病の治療費】毎月の注射代が払えない?リアルな治療費と難病の医療費助成

「生物学的製剤を勧められたけれど、費用はどれくらいかかるのだろう」「栄養療法を続けると生活にどう影響するのだろう」といった不安を感じている方は少なくないのではないでしょうか。クローン病は10代後半から20代で発症することが多く、寛解と再燃を繰り返しながら長期にわたることが多いため、月々どれくらいの費用がかかるのかを早めに知っておくことは、治療を続けていくうえでも、家計管理のうえでもとても重要です。この記事では、診断後に外来で安定した治療を続けている方を想定し、生物学的製剤や栄養療法にかかる費用の目安と、負担を軽くするために使える公的制度について解説します。


中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。


診断後・外来治療にかかる費用の全体像

クローン病とは、口から肛門までの消化管のどこにでも慢性的な炎症が起こる病気で、国が指定する指定難病(していなんびょう)の一つです。指定難病とは、原因不明で患者数が少なく、治療が長期にわたる病気として国が定め、医療費助成の対象としている病気のことです。診断には血液検査に加えて、大腸内視鏡検査(だいちょうないしきょうけんさ)による病変の確認や、腹部CT・MRI検査が行われます。大腸内視鏡検査とは、肛門からカメラを挿入して腸の内側を観察する検査のことで、たとえるなら「腸の中を実際に目で確かめる健康診断」のようなものです。

クローン病は小腸(しょうちょう)にも病変ができやすいため、大腸内視鏡では届かない範囲を調べる必要がある場合には、小型のカメラを内蔵したカプセルを飲み込んで小腸の内部を撮影する小腸カプセル内視鏡検査(しょうちょうカプセルないしきょうけんさ)が行われることがあります。クローン病では腸が狭くなっていることがあり、カプセルが途中でとどまるおそれがあるため、事前に同じ大きさの崩れるカプセル(パテンシーカプセル)を飲んで通過を確認したうえで実施します。なお、大腸用のカプセル内視鏡は大腸内視鏡検査が難しい場合に用いるもので、クローン病の診断を目的とした保険適用はありません。

3割負担の場合、初診料と外来・在宅物価対応料をあわせた293点(2,930円)のうち自己負担は880円程度で、大腸内視鏡検査(生検を含む)を行うと自己負担は9,000円〜15,000円程度になることが目安です。診断が確定し治療方針が決まるまでは複数回の検査や通院が必要になることもあり、この時期の自己負担は検査一式で2万円〜3万円程度になることも珍しくありません。小腸カプセル内視鏡検査を行う場合は、事前のパテンシーカプセルによる通過確認とあわせて、3割負担で約3万円が別途かかります。カプセル本体の材料費(10割で76,500円)が含まれるため、ほかの検査より高額になります。

■ 初診料+外来・在宅物価対応料
・点数(1点10円):291点+2点
・自己負担目安(3割):約880円
■ 血液検査(炎症反応・栄養状態等)
・点数(1点10円):200〜400点程度
・自己負担目安(3割):600〜1,200円程度
■ 大腸内視鏡検査(生検含む)
・点数(1点10円):3,000〜5,000点程度
・自己負担目安(3割):9,000〜15,000円程度
■ 腹部CT・MRI検査
・点数(1点10円):2,000〜5,000点程度
・自己負担目安(3割):6,000〜15,000円程度
■ 小腸カプセル内視鏡検査(事前のパテンシーカプセル・カプセル代を含む)
・点数(1点10円):10,070点程度
・自己負担目安(3割):約30,000円程度
■ 合計目安(カプセル内視鏡を除く検査一式)
・点数(1点10円):-
・自己負担目安(3割):約20,000〜30,000円

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

※小腸カプセル内視鏡検査は必要に応じて行う検査のため、合計目安には含めていません。実施した場合は約3万円が加わります。

生物学的製剤による維持療法の費用

薬物療法で症状が落ち着かない場合や再燃を繰り返す場合には、生物学的製剤(せいぶつがくてきせいざい)が使われることがあります。生物学的製剤とは、腸に炎症を引き起こす特定の物質の働きだけを狙って抑える注射・点滴の薬のことで、たとえるなら、炎症を引き起こす「スイッチ」を選んでオフにするような薬です。

代表的な薬剤には、レミケード(インフリキシマブ)、ヒュミラ(アダリムマブ)、エンタイビオ(ベドリズマブ)、ステラーラ(ウステキヌマブ)、スキリージ(リサンキズマブ)、オンボー(ミリキズマブ)、トレムフィア(グセルクマブ)などがあります。投与間隔は薬剤ごとに異なり、点滴で8週に1回のものもあれば、自宅で自己注射できるものもあります。3割負担の場合、体重50kgの方が標準的な用量で維持療法を続けると、1回あたりの自己負担は薬剤によって約1万2千円〜13万円と幅があります。投与間隔が薬剤ごとに違うため、月あたりに換算すると約1万6千円〜11万円程度が目安です。

■ レミケード(インフリキシマブ)
・投与方法・間隔:点滴、8週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約32,000程度
・月あたりの換算目安:約16,000程度
■ ヒュミラ(アダリムマブ)
・投与方法・間隔:皮下注射、2週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約12,000〜14,000円程度
・月あたりの換算目安:約24,000〜28,000円程度
■ エンタイビオ(ベドリズマブ)点滴
・投与方法・間隔:点滴、8週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約84,000円程度
・月あたりの換算目安:約42,000円程度
■ エンタイビオ(ベドリズマブ)皮下注
・投与方法・間隔:皮下注射、2週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約21,000円程度
・月あたりの換算目安:約42,000円程度
■ ステラーラ(ウステキヌマブ)
・投与方法・間隔:皮下注射、12週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約110,000〜120,000円程度
・月あたりの換算目安:約39,000円程度
■ スキリージ(リサンキズマブ)
・投与方法・間隔:皮下注射、8週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約70,000〜130,000円程度(用量により異なる)
・月あたりの換算目安:約35,000〜67,000円程度
■ オンボー(ミリキズマブ)
・投与方法・間隔:皮下注射、4週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約110,000円程度
・月あたりの換算目安:約110,000円程度
■ トレムフィア(グセルクマブ)
・投与方法・間隔:皮下注射、8週に1回
・1回あたりの自己負担目安(3割):約98,000円程度
・月あたりの換算目安:約49,000円程度

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

※いずれも指定難病の医療費助成や高額療養費制度を利用する前の金額です。これらの制度を利用すると、月々の負担には上限が設けられます。

2026年6月の診療報酬改定では、在宅自己注射指導管理料(ざいたくじこちゅうしゃしどうかんりりょう)の対象薬剤にグセルクマブ製剤(トレムフィア皮下注)が追加されました。在宅自己注射指導管理料とは、自宅で注射を行う患者さんに医師や看護師が使い方を指導する診療のことで、対象薬剤が広がったことで通院回数を減らしながら自宅で治療を続けやすくなっています。

配信元: Medical DOC

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