突然始まった「健康志向」
彼が新しいスマートウォッチを購入したのは、ちょうど春の終わり頃でした。「最近、眠りが浅いから質を上げたいんだよね」と語り、毎朝のように睡眠スコアをチェックする姿。私はそんな彼の変化を、大人としての自己管理意識の芽生えだと好意的に捉えていました。
ただ、少しだけ気になることもありました。以前は休日になれば「今日何する?」と連絡をくれていた彼が、「体調を整えたいから」と一人の時間を優先するようになったのです。寂しさはありましたが、「彼の健康のためなら」と自分に言い聞かせる日々が続きました。
ふとした瞬間に見えた画面
ある日、彼の家で映画を観ていたときのこと。彼が席を立った隙に、テーブルのスマートフォンが光りました。ふと目に入ったのは、睡眠データの共有通知。そこに表示されていた名前は、私のものではありませんでした。
心臓が一瞬止まるような感覚を、今でも覚えています。「私に隠れて誰と睡眠データ共有しているの?」映画の音声は遠のき、内容など何も頭に入ってこなくなりました。見間違いであってほしいと願いながら、私の心はざわめきに支配されていきました。
