サヨリヤドリムシが一途なのは「捕食を避ける」ため
この実験で特に重要だったのは、寄生の成立だけでなく、幼生が捕食されるかどうかも同時に調べられていた点です。
観察の結果、クロダイやメジナは、サヨリヤドリムシの幼生を頻繁に捕食していました。
それに対して、主要宿主であるサヨリが幼生を捕食する場面は、実験を通して一度も確認されませんでした。
この違いは、寄生虫にとって非常に大きな意味を持ちます。
間違った魚に近づくことは、単に寄生できないだけでなく、捕食されて命を落とす危険を伴う行為だからです。
サヨリヤドリムシの幼生にとって、サヨリは安全に寄生でき、成長と繁殖が見込める最適な宿主でした。
一方、非主要宿主の魚は高い捕食リスクを伴う存在です。
このような状況を考えると、幼生がサヨリを積極的に選んでいると考えるのは自然です。
稀に見られる非主要宿主に寄生している例は、幼生が捕食を避けた結果として起きている可能性があります。
この研究は、ウオノエ科の寄生虫で宿主を能動的に選んでいることを実験的に示した、初めての成果です。
寄生虫サヨリヤドリムシは「どんな魚にも見境なく寄生する存在」ではなく、生き残るため、「本命に対して一途」だったのです。
参考文献
寄生虫は“本命の魚”を選ぶ ― ウオノエ類が宿主を見分けていることを水槽実験で証明
https://www.hirosaki-u.ac.jp/topics/110683/
元論文
Host preference of an obligate fish parasitic isopod, Mothocya parvostis
https://doi.org/10.1016/j.parint.2026.103233
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

