人事部、経営側の本音
人事部や経営側としては、シニア社員にはとっととお引き取り願い、若い社員を増やして、会社の平均年齢を下げたいのが本音でしょう。
かつての部下を直属の上司にするのは、「早く退職してください」という会社からの肩叩きの場合もあります。
しかし、役職定年で年収が7掛けになり、それがさらに半減する再雇用の定年延長者は経営者から見ると、ありがたい存在でもあるのです。
例えば、システム開発のプロジェクトを考えてみましょう。
顧客との価格交渉で、人件費をひとりあたり月150万円を切る攻防をしているとします。そこでサービスの品質を保ち、顧客の予算内に収め、基準以上の利益を出すには、こうしたシニア社員(エルダー社員)を組み入れることが不可欠です。
バリバリの戦力を新入社員並みの年収で使えることが、経営的にどれだけメリットがあるかは想像に難くないでしょう。
プロ野球のピッチャーにたとえると、かつて年間10勝し、年俸1億2000万円だった選手が40歳を過ぎ、年間5勝しかできなくなったけれど、年俸3600万円なら契約を勝ち取れるような話です。
定年5年前からは「仕事をしない」
つまり、10勝できるバリバリ現役の投手ひとりより、5勝で3600万円の投手ふたりのほうが、合計7200万円で10勝という計算になりますから、かなりの経済合理性があります。差額を若手の強化に回すこともできます。
営業職が60歳になったからといって、それまでの営業スキルや人脈がいきなり通用しなくなることはありません。体力の衰えは多少あるとしても、昔の人脈が育ち、各所で出世しているはずなので、キーパーソンに会いやすく、むしろ若手より圧倒的に有利です。
技術職も同じです。昔の技術やスキルは使い物になりませんが、それをアップデートして50代までやってきたのですから、「いきなり」はないでしょう。
シニア社員からすると、「仕事内容は変わらないのに、なぜ年収だけが新入社員並みになるのか」と不満が募るのも当然です。
では、どうすればいいのか。
私のメッセージをひと言でまとめると、こうなります。
定年直前の5年間は仕事をせず、次の人生の準備をしましょう。次の人生の準備をするのが、最優先の仕事です。
「仕事をしない」というのは、文字通り「サボる」のではなく、「会社に与えられるがままに仕事するのをやめる」という意味だと解釈してください。ただ、多くの人は長年「会社に求められる仕事」をしてきたので、これが実に難しい。
だからこそ、「たいした仕事を任されていない人」に、私は「おめでとうございます」と言いたいのです。誰からも非難されず、大手を振って第二の人生の準備ができますから。
一方で、「5年くらいじゃ何も変わらない」と思う方も多いでしょう。
でも、それは間違いです。5年あれば準備期間としては十分です。
実際、Aさんの同僚のように「資格を取得し、そのため70歳まで働ける職場に転職できた人」がいます。その他にも「定年後に趣味のように楽しみながら稼ぐ人」「仲間と一緒に会社を立ち上げた人」「転職して給与が上がった人」など、さまざまな実例があります。
文/大塚寿

