ABCテレビの長寿バラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』の1月23日放送回がネット上で大炎上を起こした。出演した家族が育児放棄やヤングケアラーの状況にあることを彷彿とさせる“演出”がなされ、家族の元に誹謗中傷や殺害予告まで来る事態に至った。同局の今村俊昭社長は1月30日の記者会見で「ヤングケアラーという社会課題に対して意識を持ちそこねていた。深く反省している」と謝罪、番組はやらせや捏造ではないと説明した。いったいなぜこんな事態に発展したのか、渦中の家族を緊急取材した。
「もう全てが信じられなくなってしまって…皆様でご判断ください」
番組は視聴者参加型のバラエティで、スタジオを「探偵局」とし、視聴者から寄せられた依頼について探偵局員に扮したタレントが現地調査する内容だ。
38年間放送されている長寿番組のため、老若男女から親しまれており、番組HPの応募フォームへの依頼は全国各地から届くという。
問題となった放送回の依頼者は広島県内に住む6人兄妹の長男だ。その依頼を担当した探偵局員は「霜降り明星」のせいやである。
番組のなかで長男は「0歳児から10歳の妹まで5人の兄弟の面倒を見ながら家事をしているため、探偵局員に長男役を代わってほしい」と依頼した。
放送前からSNS上では「ネグレクトではないか」「ヤングケアラーだ」と注目され、放送直後から連日大炎上した。依頼者の両親の職場の住所や自宅がさらされ、元迷惑系YouTuberへずまりゅう奈良市議が職場前へ突撃する様子をXに投稿するなど、家族の日常生活が脅かされている。
実際のところ家族はどんな暮らしぶりなのか。日本中から“ネグレクト夫婦”と罵られ、誹謗中傷の的となってしまった阿部恭宏さん(38)と妻の美佳さん(38)に取材した。
記者が待ち合わせ場所である夫婦の会社を訪ねると、夫は声を震わせこう話した。
「誹謗中傷や嫌がらせが続き、仕事も全てキャンセルしています。もう全てが信じられなくなってしまって、正直あなた方が本当に記者であるかも、いらっしゃるまで疑っていました……。
私たちの長男は決してヤングケアラーではないと思うのですが、連日そんな罵声を受けていると、自信もなくなってきました。私も、妻も家族全員が何もやましいことをしないで生活してますし、顔出しで、ウソ偽りなく話をしますので、皆さまでご判断ください」
インタビュー取材は6時間にも及んだ。途中、依頼者である長男や次男(10)、長女(8)らも参加、子どもたちは「お父さんや、お母さんを傷つけないでほしい」「探偵ナイトスクープがなくならないでほしい」と声をそろえた。
当初の依頼内容は…
まずは番組出演までの経緯を聞いてみた。
「もともと僕が番組のファンで司会者が上岡龍太郎さんだった2000年頃から観ていて、長男も小学校高学年くらいから一緒に観るようになりました。僕が観ていると長男も隣に座って一緒に観るという感じで、長男、それに下の子どもたちも番組のファンになっていきました。
去年夏頃に長男が『テレビに出たい』『番組に依頼を出してみたい』と言い出したので、ふたりで依頼文を考えて昨年9月ごろ応募フォームに提出したんです。
ちょうどその時期、長男の家庭科の授業で『家のお手伝い何をしてるの?』みたいな発表があって、長男は本当に沢山お手伝いをしてくれていたから、ウチは大家族だし番組側も興味もってくれるのかなって…」(恭宏さん)
原文そのままではないが、当初の依頼内容は以下のような内容だった。
〈僕の家は6人兄弟で、両親は共働きで家族8人で協力して生活しています。親だけで家事をやるのは大変過ぎるので、子供らが自主的に手伝っています。長男である僕も家事の手伝いや兄弟の面倒を見ることが多い。世の中の小6の子供よりも明らかに家の手伝いが多い気がするから、探偵さんに小6の子供がどのくらい手伝いをしているのか調べてほしい〉
すると数日後に番組の放送作家から恭宏さんの元に連絡が来たという。
「作家さんから、企画に出したいけど元の依頼文だと採用は難しそうだと言われました。そこで長男と直接話したいと言われ、作家さんが長男に『他に君が家で困ってること、探偵さんに解決してほしいようなことはある?』などと聞き取って依頼文を作りました。
そして10月頃だったか、作家さんが我が家にロケハンに来てくださったんです。その日はちょうど妻が作ったハンバーガーを家族みんなで食べていたので『その図が面白いので撮影する時はこれを再現する感じでいきましょう』と言ってもらいました」(恭宏さん)
放送作家が阿部家を訪れ、恭宏さんと長男はそれぞれヒアリングを受け、その後も数回にわたり電話で打ち合わせを繰り返したという。
そうしてABCテレビが放送後に番組HPで出した声明文にある、放送用に構成・改稿された「正直、長男をやるのに疲れた。(略)ぼくの代わりに長男やってくれませんか」という依頼文が出来上がったようだ。
依頼文が変わったことについて、「作家さんが面白いモノを一緒につくろうと考えてくださり、我々もテレビに出たかった気持ちもあり抵抗はありませんでした」と恭宏さんは話す。長男も「とにかく出たかったけえ、放送作家の人から『決まりました!』と連絡が来たときは嬉しかった」と振り返る。

