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水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた

水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた

水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた
水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた / Credit:Geometry-Enabled Recoverable Floating Superhydrophobic Metallic Tubes

噴水に小銭を投げ込むと、金属のコインは当たり前のように底まで沈んでいきます。

タイタニック号の事故の話を知らなくても、「重い金属は沈むもの」という感覚は、ほとんどの人が子どものころから知っている常識でしょう。

ところがところが、アメリカのロチェスター大学(U of R)で行われた研究によって、表面を特別な加工で変身させるだけで、穴をたくさん開けても沈まないアルミニウムのチューブが作られたのです。

このチューブは、水槽の強い波にたたきつけられても、わざと水中に押し込んでも、しばらくすると浮力の働きで水面まで戻ってきます。

さらに穴だらけにしても、浮力は保たれたままでした。

研究チームはこうしたチューブをいかだのように組み合わせて、重い金属の重りを支えたり、波で揺れる動きを利用して電気を生み出すことにも成功しています。

いったいどういうしくみで「穴だらけでも沈みにくい金属」が実現しているのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年1月27日に『Advanced Functional Materials』にて発表されました。

またYouTubeでは実験の様子を「沈まない金属を作る(Creating Unsinkable Metal)」というタイトルで動画としても公開されています【動画は3ページ目にあります】。

目次

  • 生物に学ぶ「水をはじく」ことで生まれる浮力
  • 穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた
  • 沈まない金属で何を作るか?

生物に学ぶ「水をはじく」ことで生まれる浮力

ハスの葉とアメンボに学ぶ「水をはじく」ことで生まれる浮力
ハスの葉とアメンボに学ぶ「水をはじく」ことで生まれる浮力 / Credit:Canva

水に硬貨やスプーンを落とすと、すぐに底まで沈んでいきます。

それは(言うまでもあいませんが)、金属そのものの密度が水より大きいからです。

一方で、大型の客船やタンカーは鉄でできているのに沈まずに浮かんでいます。

これは、船全体で見ると中身にたくさん空気を含んでいて、「鉄だけ」ではなく「鉄+空気」をまとめたときの平均の密度が水より小さくなっているからです。

ここで、もう一つ知っておきたいのが「水をはじく性質」です。

レインコートや折りたたみ傘の布、フッ素加工のフライパンなどは、水滴をぼたっと落としても、べったり広がらずにコロコロと丸い形で転がっていきます。

こうした性質を「撥水性」といいます。

その中でも、特に強く水をはじく状態を「超撥水」と呼びます。

超撥水な表面では、水滴と表面の接触角とよばれる角度がとても大きくなり、ほとんど真ん丸に近い水滴になります。

このような表面には、目に見えないレベルの細かい凸凹がたくさんあり、そのすき間に空気の層ができていることが多いと考えられています。

その空気の層がクッションのような役割をして、水を寄せつけないのです。

自然のなかにも、超撥水に近い性質をうまく利用している生き物がいます。

代表的なのがハスの葉です。

ハスの葉の上では、水滴がまん丸な玉になって転がり、表面の汚れを一緒に連れ去ってくれます。

また、水面の上をスイスイ走るアメンボも、足の細かい毛と撥水性のおかげで、水面の膜を破らずに浮かび続けることができます。

またアリの一種「ヒアリ」なども身体の表面が水を弾く性質があり、互いの手足を結ぶことで巨大なイカダを作り、洪水が起きても何日間も浮かんで生き残ることが可能です。

自然界では大昔から「水を弾いて浮力を得る」という方法を取り入れてきたのです。

この仕組みは人工的にも再現されていて、表面全体を超撥水にした板などは、水面ではよく浮くことが知られています。

しかし一度強い波で完全に水中に沈められてしまうと、中の空気が逃げてしまい、自力で水面まで戻ってこられないという欠点がありました。

ロチェスター大学のグオ教授の研究グループは、こうした問題に挑むために、以前から「沈みにくい金属」の研究を進めてきました。

2019年には、超撥水加工した金属の板を組み合わせて、水中でも空気を抱え、浮力を保てる構造を実現しています。

しかし、そのときの金属ディスクは、激しく揺れる水の中で傾いたり、波の衝撃を受けたりすると、中の空気が逃げ出してしまい、十分に安定しているとはいえませんでした。

そこで今回、ロチェスター大学の研究者たちは、何度沈めても浮いてくるタフな浮力を持つ金属を作れないか新たな挑戦に挑みました。

穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた

穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた
穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた / Credit:Geometry-Enabled Recoverable Floating Superhydrophobic Metallic Tubes

何度も沈めても浮いてくるような「水をはじく浮力」を金属に持たせるにはどうしたらいいのか?

そこで今回の研究では、平らな板ではなく「筒」という形に着目し、内側の表面を超撥水にしつつ、太さや長さ、内部の仕切りの入れ方まで含めて徹底的に最適化することで、「強くて、壊れにくく、それでいて沈みにくい金属チューブ」を目指しました。

普通のアルミニウムのパイプの表面を細かく加工し、超はっ水の性質を持たせることで、チューブの外側だけでなく内側の壁でも水を強くはじくようにしたのです。

するとチューブの中に空気の泡を閉じ込め、その空気が水中でも安定して残るようになりました。

また重要なパーツとして、筒の真ん中に入れた「仕切り板」の存在があげられます。

ふつうの筒を傾けると、深いほうの端にかかる水圧が大きくなり、その差によって中の空気が浅いほうの端から押し出されてしまいます。

そこで研究者たちは、筒の中央に水を通さない薄い板を入れ、内部を2つの独立した空気室に分けました。

こうすることで、一方の端が深く沈んでも、その空気室の中だけで圧力が完結し、反対側から空気が逃げにくくなります。

実験では、筒を水平から垂直まで大きく傾けても、水中での浮力がほとんど変わらず、落下させて水面にぶつけるような激しい衝撃にも耐えられることが示されました。

またどのくらいの太さのチューブがいちばんよく浮くかをくわしく調べたところ、内側の直径がおよそ五ミリ前後のものが、水中で自分の重さのほぼ2倍近い浮力(上に押し上げる力)を生み出せることがわかりました。

細すぎても空気が足りず、太すぎても水が入り込んでしまうため、自然界のクモやアリと同じように、「空気をいちばん効率よくためこめるサイズ」が存在することが示されたのです。

水に浮く金属チューブを何本にも束ねたイカダ。
水に浮く金属チューブを何本にも束ねたイカダ。 / Credit:Scientists engineer unsinkable metal tubes

さらに驚かされるのが、「穴をあけても沈みにくい」という性質です。

研究では、直径数ミリメートルの穴を15か所もあけ、全体の一割ほどの金属を削り取った“ぼろぼろのチューブ”を用意しました。

それにもかかわらず、このチューブを水中に押し込むと、やはり浮力の働きでふわりと水面まで戻ってきたのです。

穴から水は入ってきますが、超撥水な内側の壁がしっかり水をはじくため、削り取られた金属のすき間を水が埋めるだけで、中の大きな空気室はそのまま保たれます。

結果として、浮力とチューブ自身の重さがほぼ同じ割合で減っていくため、「支えられる荷物の量」という意味での性能はほとんど変わりませんでした(誤差の範囲)。

最後に研究チームは超撥水アルミチューブをいくつも並べて接着して小さないかだに組み上げました。

内径がおよそ5ミリメートルのチューブを八本束ねたいかだは、自分自身の重さの約二・九倍もの金属の重りを水面で支え、さらに水中にしずめた状態でも、重り自体が水の中で少し浮くことも含めて、自重の約一・六倍の重さを支えたまま潜水艦のようにその場に静止させることもできました。

また、このいかだをコイルと磁石と組み合わせて水面に浮かべ、波で上下させることで、わずかではありますが電流を取り出す「波力発電」のデモも行われています。

中学で習う電磁誘導(磁石とコイルが近づいたり離れたりすると電気が生まれるしくみ)では、磁石が動くと電気が生まれます。

発電実験では、波に揺れるアルミいかだの動きで磁石が上下し、コイルを通る磁気の量が変わって電流が生まれたのです。

配信元: ナゾロジー

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