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陰謀論にハマった恋人は「そこにいるのに、もう別人」だった

陰謀論にハマった恋人は「そこにいるのに、もう別人」だった

失われたのは恋人か、それとも「共有していた現実」か

失われたのは恋人か、それとも「共有していた現実」か
失われたのは恋人か、それとも「共有していた現実」か / Credit:Canva

今回の研究によって、「陰謀論を強く信じることは、その人自身だけでなく、そばにいる恋人の心や体、そしてふたりの関係そのものに大きな負担をかけうる」ということが、具体的なエピソードとともに示されました。

そしてその崩壊の過程が4つの大きな共通項──「関係のこじれ」「信じていない側へのダメージ」「なんとか理解しようとする動き」「支えを求めることと別れのプロセス」──として存在することがわかりました。

特に印象的なのは、パートナーを亡くしたわけではないのに、価値観と世界の見え方がすっかり変わってしまったせいで「以前の恋人を喪った」と感じてしまう、というポイントです。

一方で、参加者たちが恋人を「悪人」としてではなく、「何かに捕まってしまった被害者」と見ていたことも、研究者たちはその背景も考察しています。

多くの人が、陰謀論インフルエンサーや“陰謀ビジネス”が、不満や孤独を抱えた人たちをターゲットにして、金銭や影響力を得ている構図を感じ取っていました。

つまり、「陰謀から人々を守るための真実」を追いかけているつもりで、実は別の“搾取の仕組み”に飲み込まれているかもしれない、という皮肉な状況です。

ある意味で、陰謀論ビジネスとは、情報の判別が難しかったり、不安や孤独を抱えた人たちをターゲットにして、その弱みをお金や影響力に変える「弱者ビジネス」の側面もあると言えるでしょう。

論文では、今回の結果が、既存の研究とどうつながるかも整理されています。

たとえば、親密な関係では「同じような価値観を共有している」という感覚(共有現実)が、安心感の土台になっていると考えられていますが、陰謀論はその土台を真っ二つに割ってしまいかねない可能性があります。

また、長く続く解決不能なケンカは、免疫の働きなどにも悪影響を与えることが知られており、今回の参加者が心身の不調を訴えていたこととも整合的です。

さらに、陰謀論は時間とともにどんどん深く、過激になりやすく、一度深いところまで落ちてしまうと、周りからの説得がほとんど効かなくなる、という従来の指摘も裏づけられました。

もちろん、この研究にも限界はあります。

研究に参加した人数は17人と多くはなく、主な居住地もイギリスとアメリカが中心で、文化や社会制度が違う国で同じような結果になるかは、まだわかりません。

それでもこの研究の価値は、数字では拾いにくい“関係の壊れ方”を、はっきり言葉にした点にあります。

恋人が陰謀論にのめり込むとき、何が起きやすいのか。

どこで心身が削られ、どこで安全が問題になり、どこで支援が必要になるのか。

その輪郭が見えれば、周囲が「気のせい」「ただの意見の違い」で片づけずに済むようになります。

また研究者たちは、「今後は陰謀論を信じる本人だけでなく、その周りにいる恋人や家族のニーズにも、もっと光を当てる必要がある」と述べています。

もしかしたら未来の世界では、陰謀論にはまり込んでしまった家族に対して、医学的な支援を与えるのが当然になっているかもしれません。

元論文

“You lose the person; they’re still there but you don’t recognize them”: A qualitative study examining the consequences of conspiracy beliefs for romantic partners
https://doi.org/10.1111/bjso.70033

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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