・失くしてしまった何か
ゆえに、外観も非常に味がある。ホームにむき出しのカウンターは現代の駅の飲食店ではお目にかかることがない。駅の雑踏と境界がなく、肩擦り合わせて食べる雰囲気には、時代の忘れ形見のような失くしてしまった何かが感じられる。
そこで私も券売機で食券を購入して行列に並んだ。じりじりと進む列。カウンターにたどり着き食券を引き換えできたのは1時間ほど後のことだった。
・ある意味納得の味
私が注文したのは「チャーシューメン(税込850円)」。メニューはいずれも素朴な内容で700円~850円の間。当然、チャーシューメンも手間をかけたこだわりの1品という雰囲気ではなく、気楽に食べられるチャーシューメンという感じだ。
スープを飲んでみると、町中華のなんでもない醤油ラーメンスープの味がする。ツルしこのストレート麺もなんでもなさに拍車をかけていて、極めて肩の力が抜けた味だ。
ただ、チャーシューに塩が効いており、そのチャーシューが味を引き締めるので最後まで全く飽きずに食べることができた。なんでもないのにバランスは良い。意外と思い出に残るのってこういう味なのかもしれないなあ。
私はラーメンマニアというわけじゃないけど、別れを惜しむ人がつめかけるのも理解できる味であった。なんでもない一瞬っていうのが実は一番得難いものなのかもしれない。
