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「野球に興味なかったのに…」気づけば143試合すべて観戦…阪神タイガースに沼って気づいた “推し”が日々を支える幸福感の正体〈牛窪恵×中江有里〉

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負け試合でも幸福感を得る技術

牛窪 負け試合後についても、お聞きしたいです。

中江 私は児玉清さんのエッセイのタイトルでもある『負けるのは美しく』からお言葉をお借りして、自分の本でも「負けるのは美しく」と書いたのですが、負けた日はものすごい量の日記を書くんです。

牛窪 日記ですか?

中江 ええ。去年から143試合、全部感想を書いているんですけど、いちばん長くなるのは負け試合なんです。勝った時って、特に言うことはないじゃないですか。「とらほー!」で幸せだから。でも負けた時は、「あれがダメだった」「ここをこうしておけば」と振り返るポイントがいくつもあって、ずっと書いてしまう。

牛窪 分かります。私も仕事柄、試合後にヤフーのコメント欄なども見ますが、阪神ファンはみんな「監督気分」になるんですよね。「なんであそこで走らせなかったんだ」「なぜバントだったんだ」と。でも、自分の予想が試合で当たると、推理小説みたいにスカッとする。これが、著書にも書いた「インファレンス効果」。それって、幸福感を得るうえですごく大事なんですよね。

負けた時も、負けっぱなしで終わらせないで、その後に反省会をする。行動心理学でいう「ピークエンドの法則」といって、嫌なイメージの「エンド」は、そこで終わらせずに後ろ倒しすることで、プラスに上書きできるんだよという考え方です。私は甲子園で負けた時は、だいたい球場近くの「コメダ珈琲」で、ひとり反省会をします(笑)。

「あかん、阪神優勝してまう」

牛窪 あと、阪神ファンには、独特の共通言語がありますよね。「334」とか。2005年の日本シリーズでロッテに大敗した時の合計スコア、33対4のことなんですけど、この数字を見ると、ファンは自虐的なツッコミを入れ合うのがお約束になっています。

「あかん、阪神優勝してまう」も、かつてABC(朝日放送)がこのタイトルの特番を組んだら、それまで絶好調だったチームが急に失速して、結局優勝を逃したことがあって。それ以来、ファンにとってはある種トラウマのような言葉になっています。

中江 岡田監督が優勝を「アレ」と言い換えるのも、この流れとつながっていますよね。

牛窪 そうそう。岡田監督自身は、以前の(オリックス・バファローズの)監督時代の経験を活かして「アレ」と言うんだと仰ってましたが、たぶんそれだけじゃないと思う。実は、そうした少し茶目っ気のある合言葉や隠語を共有することが、チーム全体のストレスを和らげる「ユーモアコーピング効果」につながるんです。仲間内だけで通じる言葉があることで、結束も深まりますし。

中江 岡田監督は天才だなと思います。まさに、分かる人にだけ分かる共通言語ですよね。

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