「作品内容」だけを対象に評価を試みたが…?
それでは、「先入観」を無理矢理にでも排除して『約束の時計台』を鑑賞した場合、どのような評価になるでしょうか。
「いろいろな批判や懸念点は横において、作品そのものを楽しめれば良い」と思って鑑賞したところ、筆者個人としては前作と同様に「Not For Me」でした。
前作では、全体的に「自己啓発本のように主張を押し付けられているような感覚」があり、SNS上でも同様の意見が複数ありました。『約束の時計台』でそうしたノイズになる要素が改善されていれば良いな……と希望を持っていたのですが、残念ながら本編の冒頭から「先入観なし」の評価が不可能だと思い知らされることになりました。
何しろ、主人公・ルビッチがモノローグで話しているのが、2019年の近畿大学の卒業式で西野亮廣さんが話されていた「時計の長針と秒針」のスピーチほぼそのままなのです。個人的には、機械的に動いている時計の針が重なることを、人生が一定の間隔で報われるかのように例えることに無理があると思うのですが、これを本作はメインテーマに置いているのです。
それでも、そのテーマが良い物語として昇華されていればまだ良かったのですが、前作に増して世界設定も物語運びにも納得しにくいところが多く、ご都合主義を感じてしまいました。
STUDIO4°Cの素晴らしいアニメの技術を詰め込むことができるのですから、せめて優れた脚本家を雇うなりして、作品に込めたかった思想やテーマをうまく物語に落とし込んで、良い意味で観客を「騙す」ための工夫をしてほしいと感じました。このままでは、前述してきた「先入観」と切り離して作品を評価できませんし、サロンメンバー以外の人からの幅広い支持を集めるのは難しいでしょう。
