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潰されるアルミ缶は破裂直前に「不思議なシマシマ」が現れると判明

潰されるアルミ缶は破裂直前に「不思議なシマシマ」が現れると判明

潰されるアルミ缶は破裂直前に「不思議なシマシマ」が現れると判明
潰されるアルミ缶は破裂直前に「不思議なシマシマ」が現れると判明 / Credit: Jain et al., Communications Physics (2026)

油圧プレス動画などで、金属がぐしゃっと潰れる様子を見たことがある人は多いでしょう。

強い力をかければ、薄い金属はどこかで耐えきれなくなって一気に崩れる。

ふつうはそんなイメージを持ちます。

ですが、ソーダ缶のように中身の入った缶では、少し違うことが起きます。

イギリスのマンチェスター大学(The University of Manchester)の研究チームが調べたところ、液体の入った飲料缶は、空き缶のように一気にぐしゃっと潰れるのではなく、破裂する前に「輪っか状のへこみ」を1本ずつ増やしながら変形していくことがわかりました。

缶の表面に、洗濯板のようなシマシマが順番に現れていくのです。

なぜこんなことが起きるのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年3月31日に『Communications Physics』にて発表されました。

目次

  • なぜへこみは「1本ずつ増える」のか?
  • これは缶の雑学ではなく、壊れ方の科学でもある
  • 【専門家向け】この現象は「高圧缶の変形」ではなく、「近似的に体積を保つ薄肉円筒の局在・順次座屈」である

なぜへこみは「1本ずつ増える」のか?

なぜへこみは「1本ずつ増える」のか?
なぜへこみは「1本ずつ増える」のか? / Credit: Jain et al., Communications Physics (2026)

まず大事なのは、中に何が入っているかで缶の潰れ方は大きく変わるという点です。

空き缶の中身はほぼ空気です。

空気は押されると体積をかなり減らせるため、缶全体が押し込まれたときも、中身は比較的“逃げる”ことができます。

そのため、薄い缶の壁のどこか弱い部分が一気に崩れ、局所的で急な座屈が起きやすくなると考えられます。

いわば、我慢が限界を超えた瞬間に急崩壊するイメージです。

ところが液体入りの缶では事情が違います。

液体は空気と比べてずっと圧縮しにくいため、缶を縦に押しても中身はあまり縮んでくれません。

すると缶の薄いアルミの壁は、ただ短くなることができず、代わりに、薄いアルミの壁の一部が折れ曲がることで、変形を受け止めようとします。

こうしてまず、缶のどこかに最初の輪っか(へこみ)が現れます。

(※多くの場合、それは缶の中央付近から始まります。)

ところが、変形がある程度進むと、今度は逆に“また持ちこたえる感じ”が出てきます。

缶の材料は、単純にずっとやわらかくなるわけではなく、いったん変形しやすくなったあと、また硬さを取り戻すような振る舞いを示すと考えられています。

この性質があると、すでにある1本のへこみを際限なく深くするより、あるところで新しいへこみを隣に作ったほうが変形を受け流すうえで有利になります。

たとえるなら、やわらかい紙筒を指で押したとき、1か所だけをどこまでも潰すより、少し離れた場所に次の折れ目が入ったほうが全体として無理が少ない、という感じです。

こうして缶は、1本の大きな崩れに向かうのではなく、へこみを1本ずつ増やしながら変形を分配するようになります。

すると、すでにある輪っかをさらに深く育てるより、新しい輪っかを隣にもう1本つくるほうが都合のいい局面がやってきます。

これが繰り返されることで、輪っかが1本ずつ増えていきます。

実験では、この「1本増えるたびに変形の段階が切り替わる」ことが、押しつぶすときの荷重の変化にはっきり表れました。

缶を押していくと、最初のへこみが生まれた瞬間、それまで必要だった押す力が急に小さくなります。

これは、缶がまっすぐな筒のまま踏ん張る状態から、へこみを作ることで変形を受け流せる状態へ移るためだと考えられます。

そのあと、そのへこみが深くなっていくあいだは、今ある輪っかをさらに育てるために、また少しずつ大きな力が必要になります。

しかし、そのへこみがある程度まで育つと、同じ場所をさらに深く押し込むより、隣に新しいへこみを作るほうが楽になります。

すると次の輪っかが現れ、その瞬間に必要な力がまた急に小さくなります。

つまり缶は、ずっと同じ調子で潰れていたのではなく、「1本のへこみを作ると少し楽になる」→「そのへこみをさらに育てるにはまた力が要る」→「次のへこみができるとまた楽になる」という切り替わりを繰り返していたのです。

実際、論文の力‐ひずみ曲線でも、輪っかが現れるたびに荷重が落ち、その後また持ち直すギザギザした変化が見られます。

またこれは、缶を押す速さを変えても結果はほとんど変わりませんでした。

しかも、このシマシマには気分や偶然ではなく、ちゃんとした法則のようなものがありました。

輪と輪の間隔は、缶の半径と厚みから決まる代表的な長さにほぼ比例していました。

要するに、太さと薄さが変わればシマの細かさも変わるのです。

ではここにはどんな法則が動いていたのでしょうか?

これは缶の雑学ではなく、壊れ方の科学でもある

これは缶の雑学ではなく、壊れ方の科学でもある
これは缶の雑学ではなく、壊れ方の科学でもある / Credit: Jain et al., Communications Physics (2026)

研究チームは、この現象を数式で説明しています。

そこで重要だったのが、ホモクリニック・スネーキングと呼ばれるパターン形成の考え方です。

名前は少し難しそうですが、要するに、波や模様がいきなり全体に広がるのではなく、ひとつ現れ、そこへもうひとつ、さらにもうひとつと追加されていくタイプの現象を表す数学です。

今回の缶では、その「模様」がそのままリング状のへこみになっていました。

つまりソーダ缶のシマシマは、偶然できたものではなく、自然界のパターン形成と同じようなルールに従っていたのです。

この発見は、もちろん缶つぶし動画だけの話では終わりません。

液体を入れた金属の円筒は、タンクや輸送容器、建設材料、エネルギー設備、さらにはロケット関連の構造にも広く使われています。

もし今回のような「一本ずつ増える座屈」が壊れる前のサインになるなら、危険をもっと早く察知できるかもしれません。

逆に、この現象をうまく利用すれば、金型を使わずに、充填後の缶や容器に規則正しい凹凸をつける新しい加工法につながる可能性もあります。

論文でも、こうした“型なし成形”の可能性に触れています。

私たちは缶のシマシマを見ると、つい「潰れてしわになっただけ」と思ってしまいます。

ですが実際には、その背後で液体の縮みにくさと金属の非線形な変形応答がせめぎ合い、結果として輪が一本ずつ整然と生まれていたのです。

ぐしゃっと壊れているように見える缶ですら、じつはかなり律儀に、かなり数学的に潰れていました。

何気ないソーダ缶の表面に、こんなに行儀のいい“壊れ方の法則”が隠れていたとは、少し驚かされます。

(※本記事のメインはここまでですが、次ページではこの研究を少し専門家向けに解説したものを掲載します)

配信元: ナゾロジー

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