「救い」を否定しないという強さ
興味深いのは、『イン・ザ・メガチャーチ』が信仰そのものを否定しない点です。
人は孤独に耐えられない存在です。だからこそ何かを信じ、誰かを推します。その行為は、単純に切り捨てられるものではありません。
『推しの子』においても、登場人物たちは傷つきながらも、他者からの期待や視線に支えられて生きています。それは歪(いびつ)な関係でありながら、同時に確かな支えでもあります。
本作もまた、「たとえ虚構であっても、人は救われることがある」という現実を描いています。この視点があるからこそ、単なる批判ではなく、多くの読者の共感を呼んだのでしょう。
『イン・ザ・メガチャーチ』の受賞は、現代の読者が「何に共感しているのか」を示していると考えられます。宗教、芸能、SNSといった領域は一見異なるようでいて、いずれも「信じる」という行為によって成り立っています。そして私たちはすでに、その構造のなかで生きています。
本作を読むことで、多くの読者はそのことに気づかされるのでしょう。これは決して他人の物語ではなく、自分自身の問題であるということに。
本屋大賞を受賞した『イン・ザ・メガチャーチ』は、単なる大ヒット小説というだけではなく、「自分を見つめ直すための一冊」として長く記憶される作品になるでしょう。
