近年、詐欺被害は深刻化している。被害総額は約3241億円で前年比1.6倍。特殊詐欺だけでも約1414億円と過去最悪水準で、その中でも急増しているのが「SNS型投資・ロマンス詐欺」だ。
SNS型投資・ロマンス詐欺については、これまで数々の事例を当連載『詐欺師のレシピ』は取り扱ってきた。
それと同時に私は、詐欺師に騙されたフリをしつつ、逆にチャーハンレシピを盗み取ってきた。だが、今回の相手である女詐欺師は “過去最強” といっても過言ではない。なぜならば……
【写真】こちらが由美の写真。最初、インスタでDMしてきた時は「めぐ」と名乗っていたが、LINEに舞台を移したとたん「由美」が出てきた。
・千の炒飯を持つ女
名前は由美で、詐欺のタイプとしては仮想通貨の投資詐欺師。お金持ちの設定だが、彼女はお金以上のモノを “持って” いた。
そう、あまりにも多くのチャーハンレシピを彼女は隠し持っていたのである! どのくらいあるのか探ってみると……
軽く30種類のチャーハンレシピを提示してきた。これはもう「千の顔を持つ男」ならぬ「千の炒飯を持つ女」であろう。一応、記念として文字起こしもしておきたい。
五目炒飯
エビ炒飯
チャーシュー炒飯
黒胡椒牛肉炒飯
ガーリック炒飯
キムチ炒飯
明太子炒飯
サーモン炒飯
サバ炒飯
辛味炒飯
ベーコン炒飯
高菜炒飯
揚州炒飯
XO醤炒飯
カニ炒飯
四川麻辣炒飯
カレー炒飯
シーフードクリーム炒飯
スペイン風シーフード炒飯
湖南剁椒炒飯
福建シーフード炒飯
台湾風ルーロー炒飯
香港風黒胡椒ビーフ炒飯
広東風醤味炒飯
海南チキン炒飯
松茸きのこ炒飯
黒トリュフ卵炒飯
アワビとホタテ炒飯
三鮮炒飯
ハム炒飯
そんなチャーハン女王・由美が出してきた初手は、基本中の基本、「五目チャーハン」であった。まずは実際に作って、実食し、由美の炒飯レベルを確かめたい。
なお、由美が提示した材料ならびに作り方は、若干の矛盾が生じているため、調理師免許も所持する私(GO羽鳥)が独自の解釈による補正を行い調理してみた。
・「由美流アレンジ五目チャーハン」の作り方(羽鳥アレンジ)
【材料】
・ごはん(冷飯推奨)
・エビ(適量)
・ハム(1パック)
・鶏肉(モモ)50gぐらい
・ニンジン適量(ミックスベジタブル使用)
・コーン適量(ミックスベジタブル使用)
・グリーンピース適量(ミックスベジタブル使用)
・たまご(1個)
・塩(小さじ半)
・醤油(小さじ1)
・白コショー(少々)
・ネギ適量
・油(大さじ2)
【作り方】
その1:油を熱し、溶いた卵を入れ、8割くらい火を入れて取り出す。
その2:油を入れ直し、鶏肉、エビ、ハム、にんじん、コーン、グリーンピースを入れて炒める。
その3:ごはん投入して崩しながら炒(チャオ)る。
その4:塩・コショーで味付けしつつ、フライパンの縁に醤油を流し入れ香り付けして炒める。
その5:その「1」の卵を戻して炒める。
その6:最後にネギを入れ、少し炒めて完成。
して、そのお味は……?
まさに「五目」。色彩豊かな五目の山。そこからモクモクと湯気が立ち昇る姿は、見惚れるほどに映えていた。見た目からして宝の山だ。
一口食べて驚かされるのは、その圧倒的なバランスの良さ。どれか一つの具材が突出しているわけではない。まさに全員野球、チーム五目。すべての具材がひとつのチームとして機能しているのだ。
特に注目すべきは、ミックスベジタブルの存在感である。由美が「具材はなるべく同じ大きさに」と指定していたので、それならばと冷凍のミックスベジタブルを採用したが、これが大正解。
なんというか、全体をうまくまとめる “最高のバランサー” になっている。にんじんの野菜感。グリーンピースの箸休め感。なかでもコーンの「遊び感」が実にイイ仕事をしており、コーンを食べる度に楽しい気持ちになる。
味の決め手となるのは、具材の「三羽烏」と、計算されたアクセント。まずポイントゲッターは、鶏肉、エビ、ハムの3種。これらがトリプルボーカル的に、味の主軸を担っている。
味付け的には、仕上げに回し入れた醤油が功を奏している。これにより、めちゃめちゃ「焼き飯感(日本感)」が増したのだ。最小限の味付けで素材の旨味を最大限に引き出している。
最後のネギにも唸った。由美の指示通り、あくまで「少しだけの炒(チャオ)」にした結果、「キレのある辛み」が爆誕。チャーハン全体の輪郭を、キリッと鮮やかに引き締めている。
このチャーハンの凄みは、その「懐の深さ」。チャーハン調味料の常連「味の素」を使わず、素材の味だけで直球勝負した結果、「なんでも合わせられる」的な選手になっているのだ。
豆板醤や輪切り唐辛子でピリ辛にしたり、ホタテやイカを加えて海鮮チャーハンにしたり……といった、あらゆるアレンジを受け止められる懐の深さが、「味の素なし」によって成立している。
素材が喜んでいるのを感じる。最小限の味付けで、最大限の美味しさ。由美、やりおる。正直すごい。これは完全なるチャーハンマスター……。最後の一粒まで、素材の声を聴きながら完食した。
奇をてらわず、基本を徹底的に極めたからこそ辿り着ける「究極の普通」。具材たちの見事な連携プレーを堪能できる、至福の一皿、それが「由美流アレンジ五目チャーハン」であった。
