昼過ぎに鳴った電話
その日、パート先の休憩室でスマホが鳴りました。画面に表示された夫の名前に、少し驚きました。夫が平日の昼間に電話をかけてくることはほとんどありません。
「会社の車で事故起こしちゃって。修理代を立て替えないといけないんだ。悪いけど、50万振り込んでもらえないかな」
声がいつもと違いました。早口で、少し上ずっていて。「50万? そんな急に言われても」と答えると、「頼むよ。会社に迷惑かけたくないんだ」と畳みかけるように言います。夫がここまで必死な様子は珍しく、よほどのことが起きたのだと思いました。
ひとつだけ、引っかかったこと
電話を切ったあと、すぐにネットバンキングを開きました。50万円。簡単に出せる金額ではありませんが、夫が困っているなら力になりたい。それだけでした。
でも、振込先の口座番号を聞いていないことに気づきました。折り返そうとしたとき、ふと思ったのです。修理代の立て替えなら、会社の経理に確認すれば口座もわかるはず。それだけのつもりで、夫の会社の代表番号に電話をかけました。
