銀河の分布から「バリオン音響振動」を探る
ユークリッドはまた、「バリオン音響振動」についても調べます。映像はバリオン音響振動のイメージです(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)。
ビッグバン直後の宇宙では陽子と電子がバラバラなプラズマ状態で、光は自由に飛び回る電子にぶつかるため直進できず、バリオンと光は渾然一体となって振る舞っていました。そのような状態のバリオンと光に圧力がはたらいて音波のように疎密波として伝わる振動(バリオン音響振動)が発生しました。バリオン音響振動は、水面に雨粒が落ちて生じた波紋のように周辺へ広がっていきました。
ビッグバン以降、宇宙の温度が徐々に下がっていき、約38万年後に十分に低温になると陽子が電子をつかまえて電気的に中性の原子ができます。それにより光は直進できるようになり、バリオンと光が一体の状態ではなくなります。光と切り離されたバリオンの波紋(密度の高い部分)は、その時点でほぼ静止します。そのとき、波紋は差し渡し約5億光年まで広がっていました。その後、静止した波紋に沿うように銀河が多く形成されます。
宇宙における銀河の分布には、バリオン音響振動の波紋のパターンが刻まれています。ユークリッドは、さまざまな距離における銀河の分布を測定して波紋のパターンを調べます。それにより時間の経過にもとなう宇宙の加速膨張を測定し、ダークエネルギーやダークマターの性質などに迫ります。
天の川や黄道光を避けた全天の3分の1を観測

ユークリッドは、空の3分の1の領域を観測します。残りの3分の2の領域は、天の川銀河の星々や星間物質、また黄道光のもとになる太陽系内の塵などが多いため、ユークリッドによる観測は行われません。
ユークリッドは主に2つのサーベイを行います。1つは宇宙の約1万5000平方度を観測する「ワイドサーベイ」、もう1つは約50平方度を観測する「ディープサーベイ」です。
ワイドサーベイでユークリッドは、0.57平方度の各領域を1回ずつ観測し、合計1万5000平方度を観測します。0.57平方度というと、だいたい満月の3倍の面積に相当します。
ディープサーベイでは北天1か所、南天2か所の合計約50平方度の領域を、ワイドサーベイより40〜53倍もの長時間にわたり観測を行います。なお1万5000平方度と比べると、約50平方度は非常に狭い範囲に思えるかもしれません。ただその面積は、過去30年以上の間にハッブル宇宙望遠鏡が観測した領域の合計とほぼ同じだとのことです。
(参照)ESA、Euclid Consortium

