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ダイヤモンドは小さくするとプニプニ化すると判明――15%縮んでも割れなかった

ダイヤモンドは小さくするとプニプニ化すると判明――15%縮んでも割れなかった

ダイヤが柔らかくなったのは表面のせいではなかった

ダイヤが柔らかくなったのは表面のせいではなかった 
ダイヤが柔らかくなったのは表面のせいではなかった  / (a):横軸にナノダイヤの直径、縦軸にヤング率をとった散布図。赤い点が約100個のナノダイヤの実験値、エラーバーが標準偏差、青い線がコアシェルモデルのフィッティング曲線。直径が小さくなるほどヤング率が下がる傾向が一目瞭然。(b):(111)面、(110)面、(100)面という異なる結晶面の表面構造を、DFT計算で可視化した電子密度分布図。表面近傍で電子の雲がどう分布しているかをカラーマップで示す。コア・サブサーフェス・表面で電子密度が異なることが視覚的に分かる/Credit:Zhang et al., Phys. Rev. X 16, 021010 (2026) / CC BY 4.0

「小さくなると柔らかくなる」──この現象を前にして、多くの読者は、おそらくこう予想するのではないでしょうか。

「きっと、表面の原子が柔らかいのだろう」

実際この推論は、物理学者の間でも長く有力視されてきた仮説でした。

ところが今回の研究は、この直感を真正面から裏切ります。

研究チームが電子顕微鏡の観察データと計算機シミュレーションを突き合わせて詳細に解析したところ、驚くべき事実が明らかになったのです。

表面の原子や中央部のコアそのものは硬いままだったのです。

柔らかくなっていたのはその「間」──つまり、表面のすぐ内側にある中間層だったのです。

研究チームは、この領域を「サブサーフェス」と名付けました。

この結果は原子間の距離にも表れています。

物理学においては一般に、原子と原子の距離が近いほど、結合が強く硬いと考えられています。

隣り合う原子が近くにいれば電子の雲が濃密に重なり、結合は頑丈になる。

逆に距離が離れれば、電子の雲が薄くなり、結合はヤワになる。

バネをイメージしても分かりやすいかもしれません。

短く張られたバネほど硬く、伸ばされたバネほど、触れた指で簡単に動かせるようになります。

そして研究者たちが表面、中間、中心部分の原子の距離を調べたところ一番外側の表面層では、炭素原子同士の結合距離が1.49オングストロームと、通常のダイヤ(1.55オングストローム)より短くなっていました。

距離が短い=結合が強い、つまり力学的には予想外に”硬い”状態だったのです。

また一番内側のコアでは、結合距離は1.55オングストローム──普通のダイヤと変わらない、標準的な結合です。

ところが両者の間にあるサブサーフェス層では、結合距離が通常より約5〜6%も長く伸びており、最大1.64オングストロームにまで達していました。

つまり、表面でも中心部でもない、”挟まれた中間層”こそが、ナノダイヤの柔らかさを生み出していた真犯人だったのです。

なぜダイヤの表面は硬く、内側が柔らかくなったのか──原子たちの”手の配り直し”

なぜダイヤの表面は硬く、内側が柔らかくなったのか──原子たちの"手の配り直し"
なぜダイヤの表面は硬く、内側が柔らかくなったのか──原子たちの"手の配り直し" / Crerdit:Canva

多くの人は「外に手を繋ぐ相手がいない表面こそ、一番弱いはずだろう」と思うはずです。

ダイヤモンドの内部では、1つの炭素原子がちょうど4つの隣の原子と手を繋いで結合しています。

これが最も安定した、硬さの源泉となる状態です。

ところが粒子の表面ぎりぎりにある原子は、外側には繋ぐ相手がいません。

本来握るはずの4本の手のうち、1〜2本が宙ぶらりんになってしまうのです。

この状態を物理学では「配位数不足」と呼びます。

手を繋ぐ相手の数が、本来の4に届いていない──そんな不完全な状態です。

ごく普通に考えれば、手が足りていない原子は不安定で弱くなるはずです。

ちょうど、壁際に立たされた人が、片手で手すりを掴んで身体を支えようとしても頼りないのと同じです。

ところが、自然界の原子はそんな中途半端な状態を放っておきません。

余った手を、何とかして別の形で使おうとする──これが原子たちの”生き残り戦略”なのです。

表面の原子は、実に巧妙なやり方で、この問題を解決していました。

具体的には、次のような形で手の配り方を組み替えています。

① 空気中の水素や酸素と結合する:大気に曝されたナノダイヤの表面では、空気中の原子が吸着し、余った手の受け皿になります。

② 隣の表面原子と、普段より強く握り合う:外側に繋ぐ相手がいない分、横に並ぶ仲間との結合を補強する。これを「表面再構成」と呼びます。

③ その代償として、表面と1つ内側をつなぐ手は、むしろ長く伸びて弱くなる:表面原子が②で横方向の結合を強めた反動で、内側に伸びる結合は普段より引き伸ばされ、ヤワになってしまうのです。

今回のナノダイヤで起きていたのは、このうち②と③のセット──表面の中では結合が強く締まり、その一つ内側の界面では結合が逆に弱くなるという、一見矛盾した組み合わせでした。

研究チームは、サンプルを王水で丁寧に洗浄し、さらに超高真空の中で24時間以上かけて表面の汚れを除去してから測定しています。

つまり、①の「水素や酸素による手の受け渡し」は限定的で、表面の原子は自前で手を組み直すしかなかったのです。

その結果、表面原子同士は横の仲間と強く結ばれる一方、1つ内側へ伸びる手は長く引き伸ばされて弱くなる──このダブルの変化によって、本来は不安定なはずの”手が余った”状況を乗り越えていたのです。

なお、①についても研究チームは別途計算で調べており、表面を水素で覆うか酸素で覆うかによって、この後お話しする”しわ寄せ”の大きさが変わることが分かっています。

結果として何が起こるか。

表面の原子同士は、「手が足りなくて不安定」どころか、むしろ普段より強く結合し直した状態に落ち着きます。

しかし、その代償として、1つ内側の原子との結合には明確な「しわ寄せ」が来てしまうのです。

たとえば集団の外側に立つ人(表面原子)が、横の仲間と手をがっちり組み合って踏ん張ろうとすると、もう一方の手で繋いでいた内側の人(サブサーフェスの原子)との手は、引っ張られて伸びてしまう──こんなイメージです。

結果として、最表面の原子は横同士で強く結合(1.49Å)、中間部分の原子は表面に引っ張られて距離が伸びた(最大1.64Å)、中心部の原子は影響を受けず普通通り結合(1.55Å)となるのです。

また研究では、ダイヤのサイズが小さくなればなるほど、柔らかさも増していくことが示されました。

しかし、そもそもなぜ大きさが柔らかさに効いてくるのでしょうか?

その原因は「比率」にあります。

一般に、結晶の表面が空気と接している限り、そこには同じような”柔らかい中間層”が生じうると考えられます。

ナノダイヤに限らず、大きな結晶でも、表面から数オングストローム(数原子分)内側にこうした層が存在しうるというイメージです。

表面原子が手を組み替える限り、そのしわ寄せは必ず1つ内側に溜まるからです。

では、大きなダイヤはなぜ普通に硬いのでしょうか?

答えはシンプルです。

大きなダイヤでは、柔らかい中間層が”無視できるほど少数派”だからです。

たとえば卵を焼いたときに、表面に1mmほどの焦げ層ができたとします。

卵焼きが直径30cmと巨大だった場合、1mmの焦げ層は全体の厚みに比べれば、ほぼ無視できる存在。食べた味はそれほど変わりません。

しかし卵焼きが小さく直径が3mmしかない場合、1mmの焦げ層の存在は支配的で、食べたらほぼ焦げ味になるでしょう。

焦げ目の厚みはどちらも1mmで変わりません。変わったのは全体に占める焦げ目の割合だけです。

ダイヤモンドでも、まったく同じことが起きています。

表面のすぐ内側の領域が全体に占める割合は、ダイヤが巨大ならば限りなく0%ですが、4ナノメートルと小さくなると、全体に占める割合が高くなってしまいます。

ナノダイヤの世界では、今まで少数派だった柔らかい層が、多数派になり決定権を握ってしまった──これが、「同じ物質なのに性質が変わる」現象の本質です。

配信元: ナゾロジー

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