かけがえのない宝物を胸に
ピンバッジを見れば、大会や交換したときの情景がありありと目に浮かんでくる photo by parasapoオリンピック・パラリンピックのボランティア活動には、開催国の国柄も表れるのだそうだ。イタリアではボランティアを引っ張るリーダーのような人がいて、ボランティア同士の親睦を深めるため、ゲーム大会などを開催してくれたのだという。
「みんなで“宝探しゲーム”をしたり、これはどこの国のものかなどという“国旗あてゲーム”をしたり、とても盛り上がるのです。打ち上げも開催されて、お金がある大人はお酒を飲みますが、お金のない学生はコーラだけ。それでもみんなで大声で語りあったり、歌ったり、イタリアらしいおおらかさで、とても楽しかったです。これは大都市で開催されたパリ大会ではなかったことでした。活動そのものもイタリアは程よい柔軟性があるというか、お国柄を知ることで、多少の不便や遅延のイライラも解消です」
また、オリンピック・パラリンピックではピンバッジ交換の文化があり、ボランティアとして参加した下崎さんもたくさんのピンバッジを交換した。
「日本から参加したボランティア仲間がデザインを考えてくれて、特製のピンバッジを作って現地に持って行きました。私は大会中に少し腕が痛くなったときに選手村内の病院に行ったのですが、その時に親切にしてくれた通訳の方や医師など、現地でつながりができた方々と交換しました。もちろん、選手にも“頑張れ!”という応援とともに渡してきました! バッジは大会毎にまとめて家に飾っています。これを見るとさまざまな出来事を思い出して、私にとってかけがえのない宝物、生きた証しになっています」
ミラノ・コルティナ2026大会に参加した日本人ボランティアの有志によってつくられたピンバッジ。パリ大会のデザインでも同様に日本人ボランティアでピンバッジを作成しており、そのデザインを踏襲している。桜の花の縁取りに日本らしさが photo by parasapoこれからの人生の道筋を考えたことがボランティア活動に飛び込むきっかけになった下崎さん。ボランティアを通して学んだことを問うと、こんな答えが返ってきた。
「ボランティアは、多様性を学べる場所だと言えると思います。文化にしろ人にしろ、何かを行う方法にしても、国や人によって違います。特にいろいろな人、国と出会うことのできるオリンピック・パラリンピックのボランティアは、そういう側面が大きい。経験することで、自分の人としてのキャパシティも大きく広がるような気がします。是非みなさん、特に若い方には取り組んでいただきたいと思います」
東京大会をスタートとし、今では国内外を問わずさまざまなボランティアで活躍する下崎さん。彼女のような存在も、東京大会のレガシーといえるのだろう。さまざまな人や文化と出会い、かけがえのない経験を得られる場となっているボランティアは、人や社会にポジティブな力を与えている。ボランティアに魅せられた人々が語るストーリーからは、その一端を確かに感じられるはずだ。これからも日本の国内外を問わず、ボランティアがきっかけとなって、人の人生や社会の中でさまざまなものが花開いていくことだろう。
text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
key visual by Shutterstock
写真提供:下崎道子
