『SCRUM CONNECT 2026』が、2026年4月24日に、東京都港区で開催された。主催のScrum Venturesは、サンフランシスコと日本を拠点とするベンチャーキャピタル/投資プラットフォーム。日本、アメリカをはじめ、世界のアーリーステージスタートアップに投資し、日本企業との事業連携やグローバル展開も支援している会社だ。毎年開催されるSCRUM CONNECTは、日本の企業や投資家に世界の最先端の技術トレンドを紹介するイベント。その様子をレポートしよう。
AIがさまざまな分野で起こす地殻変動に注目
まず冒頭、Scrum Ventures創業者/ジェネラルパートナーの宮田拓弥氏によるキーノートセッション。テーマは『AIが社会自体を変えつつある中、私たちはどこに価値を見出すのか?』。

宮田氏が、直近の3ヶ月を振り返って感じたのは、やはり一番はAIの驚くべき進化についてだという。1年前からでさえ考えられないほど。 次に宇宙開発、スペースXやアルテミス計画など、これらは米中の競争という新たな局面だが、アメリカの宇宙開発が加速度的に進んでいる。 それから戦争での利用も大きいところだが、ドローン。これは戦争の影響が非常に大きい。このあたりが最新のトレンドだというのは異論のないところだろう。
続いて、宮田氏は彼が仕事に就いてからの30年間について振り返った。

30年前にデジタル化が始まり、スマホ、アプリなどによるそのパーソナル化、モバイル化。それから、VR、位置情報、そして、コンピューターの中でのAIから、リアル社会に影響を与え出すAIと、驚くべき速度でトレンドが変化していっている。
宮田氏によると、Scrum Venturesが今注力しているのは、『テクノロジー』、『街』、『カルチャー』の3つの分野なのだそうだ。

ひとつはもちろん、『AIのさらなる進化』について。Scrum VenturesもApptronikというヒューマノイドを作っている会社に投資している。ApptronikはGoogleが唯一投資したヒューマノイドの会社なのだそうだが、AIと連携することで、たとえばロボットに「カリフォルニア州の法律に沿ってゴミを分別して、そこのゴミ箱に入れて」というようなことが可能になっているのだそうだ。
また別の投資先であるAMI Labsという会社は物理AI、フィジカルインテリジェンスを扱う会社。トヨタ、NVIDIA、Samsungも投資しており、会社ができた瞬間に時価総額が5000億円になったという。LLMの次にトレンドになるのではないかと言われている『ワールドモデル』の論文を書いたNY大学のヤン・ルカン氏が創業者なのだそうだ。もうひとつが、IXANA。こちらはこの日の登壇者なので、後ほど。

ふたつ目は『産業の再定義』。既存の巨大産業をAIネイティブなカタチで変革するスタートアップ。それがEarth AI。

Earth AIは鉱山を開発するスタートアップ。リチウムとかモリブデンとかそういう金属をオーストラリアのような広い国で探す場合、従来の方法だと200回掘って1回、つまり0.5%ぐらいの成功率だった。そこに2億8440万ドル、つまり約400億円を投資するというような世界だった。Earth AIはなんと70万ドル、約1億円の投資で、4回掘って3回、つまり75%の成功率を挙げたのだそうだ。これはたしかに産業構造が変わる。

さまざまなテクノロジーの進化によって、新たな価値創造が行われる。特に、最近の急速なAIの進化によって新たな価値が生まれる速度は速くなっている。この後、行われた4つのセッションを簡単にご紹介しよう。
宇宙開発にロボットが必要な理由
最初に登場したのは、なんとNASAでAI研究のリーダーをしていた経験のあるイグナシオ・G・ロペス・フランコス氏。NASAとはといえば当然のことながら、月へ行くとか、宇宙開発というイメージが強いが、NASAはロボットや自律制御のテクノロジーにおいても非常に先進的な技術を持っている。 今回は、Scrum Venturesのミシェル・ヤン氏が、NASAにおけるヒューマノイドロボットの歴史やユースケースについて話を聞いた。

写真はNASAのバルキリーというロボット。このロボットは2013年に発表されたものだが、それ以前からNASAは長らくロボット開発にリソースを費やしている。

ご存知のように宇宙空間は非常に過酷で、我々人間が活動するには酸素や温度などの環境を常に完全に維持する必要がある。それには膨大なリソースが必要になる。 もしロボットが人間の作業のいくらかを代替できるのであれば、我々が生きられる環境を保持しなくても、作業を進めることができるようになる。
将来、月面や火星に基地を作るとなれば、何百人もの労働者を現地に運ばなければいけないかもしれない。 しかし、ロボットを向こうに運搬し作業させる、もしくはロボット工場自体を月面や火星に作ることができれば、人間の居住環境を大きく広げることなく、開発を進めることができるようになる。

そういった意味で、ロボットのテクノロジーは、宇宙開発においてもとても大切なのだ。
また、地球から遠くなればなるほど、通信の遅延が問題になる。たとえば、月で約2秒、火星になると、最も近い時でも片道約3分、遠い時には約20分以上、往復で40分以上の時間がかかる。このタイムラグを超えてリモートコントロールで操作するのは不可能。 ヒューストンの指示を仰ぐことはできないのだ。つまり、AIを搭載し、自律的に判断ができるロボットが必要になるのだ。