あそこで抜かされるんだよね
小学3年生の息子は足が速く、リレーの選手に選ばれることが毎年の楽しみでした。ところが今年、同じチームに一人だけ明らかに走るのが遅い子がいたのです。その子のところで順位が落ちるのが目に見えてわかりました。
息子も帰り道に「あそこで抜かされるんだよね」とこぼしていて、その悔しそうな顔を見るうちに、私まで胸がざわつくようになっていたのです。
個人面談の帰り際に
その気持ちが抑えられなくなったのは、個人面談の日でした。面談が終わり、席を立ちかけたとき、気づけば口に出していました。「リレーのことなんですが、足を引っ張る子を入れないでほしいんです」
先生は少し間を置いて、穏やかに返しました。
「全員で走ることに意味があると考えています」
それ以上は言えず、教室を出ました。廊下で、同じクラスの保護者とすれ違いました。会釈を返してくれたその方の表情が少しこわばっていたことに、そのときの私は気づいていませんでした。
