最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
『京都撮影所案内』『大映特撮写真集』刊行記念対談 高鳥都×原口智生「後世に“残す”ということ」

『京都撮影所案内』『大映特撮写真集』刊行記念対談 高鳥都×原口智生「後世に“残す”ということ」

『京都撮影所案内』『大映特撮写真集』の企画秘話

原口 高鳥さんは『必殺』の本をいくつも出していますが、『京都撮影所案内』もその流れですか?

高鳥 はい。2022年の『必殺シリーズ秘史 50年目の告白録』から始まって4冊、毎回スタッフのみなさんを取材する度に松竹撮影所のオープンセットや装飾倉庫などを写真に撮っていて、いつかカラーで大きく見せたいなと思っていたんです。あの古ぼけた長屋なんか、たまらないじゃないですか。

▲オンボロ長屋は松竹撮影所の代表的存在

原口 松竹だけなら簡単そうですが、東映も一緒というのがえらい。

高鳥 やるなら両方の撮影所を取り上げなければ、いろんな意味でダメだと思いました。これまでのお付き合いもありますし、松竹はあっさりOKでしたが、東映はどうかな〜と思っていたのですが、予想に反してこちらも即OK。同じ立東舎で『あぶない刑事インタビューズ「核心」』という本を出した効果があったのかもしれません。両撮影所とも競うように協力的で、ありがたかったです。

原口 一見とっつきにくいけど、いい人たちですからね。高鳥さんが職人さんたちにインタビューをしてきた実績も功を奏したのだと思います。

▲東映京都撮影所の入口

高鳥 ありがとうございます。『大映特撮写真集』の成り立ちを教えてください。

原口 ホビージャパンで特撮本を編集している小沢涼子さんの企画なんですが、ちょうど2025年って『ガメラ』(65年)の60周年だったんです。『大映特撮写真集』の前に出た『昭和ガメラ PhotoArchive』編集の際に、大映の特撮関係の写真がKADOKAWAにどれくらい残っているかを確認することができて、「いましかない!」と企画が実現し、ぼくもお手伝いしました。

高鳥 なるほど、たしかにホビージャパンから『昭和ガメラPhotoArchive』と『昭和ガメラPhotoArchive』が立て続けに刊行されていますね。

▲『昭和ガメラPhotoArchive』(ホビージャパン)

原口 そう。だから『大映特撮写真集』はガメラ60周年のドサクサで成立した本なんですよ。編集の小沢さんの手腕です。高鳥さんの本もそうですが、こうやって記録として“残す”ということが大事ですよね。

高鳥 東映京都撮影所も東映太秦映画村のリニューアルでオープンセットの江戸の町並みが一新され、古い建物はなくなってしまいました。数年前、たまたま必殺本の取材のついでに観光客として旧オープンの写真を撮っていたので、『京都撮影所案内』では新オープンとの比較をすることができました。

▲2024年に完成した東映太秦映画村の新オープンセット

原口 『大映特撮写真集』は京都と東京、ふたつの撮影所に分けた構成が大きいですね。特撮文筆家の金田益実さんが「東のガメラ、西の大魔神」という区切りをつけてくれましたが、東西でまったく違うんです。

高鳥 そのあたり、巻末の対談でも原口さんと樋口真嗣さんが話題にしていましたね。

原口 どうしても京都中心になっちゃう(笑)。かつては東宝も京都に撮影所があったし、戦後は東映、大映、松竹が京都と東京に撮影所を持っていて、それぞれ時代劇、現代劇に分かれていた。同じ会社でも、その棲み分けは大きいですよね。子供のころ『大魔神』(66年)と『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(66年)の二本立てを映画館で見ましたが、やっぱり違うんですよ。

高鳥 同じ大映でも撮影所によって作品の質感が違う?

原口 そう、特撮の技法やセットの建て方もぜんぜん違う。それから自分は大映の妖怪映画に多大な影響を受けているので、それらをまるごと取り上げた写真集を小沢さんが企画し、こうして携わることができたのは光栄でした。

▲貴重な現場スナップ満載の『大映特撮写真集』

高鳥 大映京都の関係者にお会いしたことは?

原口 あります。『大魔神』の特技監督だった黒田義之さん、キャメラマンの森田富士郎さん、照明の美間博さん……大映京都のお歴々にお話をうかがう機会があったんですが、基本的に京都は「特撮班」というくくりがなくて、本編のスタッフが特撮も担当してるんです。

高鳥 一班体制ということですね。

原口 おそらく「映画は一本である」という考えなのかな。森田さんは理系の技術者なので「東宝の特撮より自分たちのほうが上だ」というプライドが強かったですね。自分は東宝も大映も大好きなんですが、その誇り高さはひしひしと感じました。円谷英二も当時『大魔神』を見てると思うんだけど、日記などに評価が見当たらない。おそらく大映の特撮に刺激を受けたと思うんですけどね。

写真のセレクトと構成の順番

高鳥 『大映特撮写真集』の作品や写真のセレクトはどなたが?

原口 まずは編集の小沢さんが選んで、そのあと金田さんや識者のみなさんに「この作品にも特撮シーンがあるよ」と教えてもらったそうです。どこまで特撮の範疇にするかが難しくて、大映の場合ワンシーンだけ特撮という作品も多いんです。ぼくも手持ちの写真で「あ、これも特撮あった」と気づいて小沢さんに追加で教えたりして、ギリギリまで大変だったと思います。たぶん誰も見てない作品もあるから、今後も一覧のリストは更新されていくでしょうね。

高鳥 『京都撮影所案内』の場合、まず全ページの写真を自分で選んで、ページごとにラフを切って……それこそ編集者じゃないから、初めての経験で大変でした。大半は自分で撮った写真だし、たくさん入れたいけど、やはりメリハリはつけたいので、そのせめぎ合い。

▲東映京都撮影所は現在11のステージが稼働している

原口 そうなっちゃいますよね。

高鳥 ラフをもとに担当編集の山口一光さんと相談し、デザイナーの倉田由紀さんがブラッシュアップしてくれました。しかし、やっぱり写真の差し替えが多発したり、あれこれ迷惑をかけました。『大映特撮写真集』の場合、KADOKAWA所蔵の写真と原口さんの私物の比率はどのくらいですか?

原口 KADOKAWAの提供が大半ですが、ほかにも混ざってますね。『あしやからの飛行』(64年)という日米合作映画が大映京都の特撮として重要で、こちらの現場スナップは自分が撮影所で拾ったものと郡司模型(製作所)のものを両方使っています。ぼくが持っていた写真もジャンルごとに詳しい人に委ねて、預けてたんですよ。それを小沢さんに入手してもらい、かき集めました。

高鳥 写真そのものも相当きれいですね。

原口 ネガから残ってる作品も多いんですが、新たにプリントするより当時の乾板や紙焼きの写真のほうがピントがバシッと合っててシャープだったりするんですよ。焼き付けもアナログだから、手焼きのよさですよね。

高鳥 先ほどの「西の大魔神、東のガメラ」という言葉どおり、本の構成としては京都撮影所の作品からはじまってます。

原口 年代的にも大映の特撮は京都から始まっていて、そこは編集サイドの方針ですね。写真的にも東京より京都のほうが見ごたえがあるし、その前に『昭和ガメラ PhotoArchive』が出てますから、今回は京都に花を持たせようかと。

高鳥 『京都撮影所案内』も「西の松竹、東の東映」ということで、あえて規模の小さい松竹撮影所から始めました。東映より松竹のほうが社歴が古いこともあって問題なく、表紙の写真は松竹の空撮が上、東映のステージが下……それで各所OKをいただいてたんですが、土壇場で「東映が下なのはいかがなものでしょう」と子会社の担当者から意見が出て、愛社精神を感じましたね。しかし、上下逆だとデザイン的に成立しないので、そこは納得していただきました。東映のほうだけステージの壁に「TOEI」という社名が入ってますからと。

原口 いかにも東映らしい話ですね。

▲松竹と東映の両撮影所を表紙にした『京都撮影所案内』

高鳥 でも、その気持ちもわかります。たしかに東映から始めるのが常道だと思うんですが、小さな撮影所から始めて大きな撮影所を案内するほうが本の構成として楽しめると思ったんです。東映のオープンセットは映画村として一般公開されてますが、松竹は関係者以外立入禁止なので、その珍しさもふくめて。

原口 自分は2010年に現場の仕事を引退したので、その後は松竹撮影所もたまにしか行ってないんですよ。だから当時と比べて様変わりした部分もあるし、あらゆる細部まで記録してあるから興味深かったですね。

配信元: ガジェット通信

あなたにおすすめ