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「猫は九回生まれ変わる」ということから生死を題材にしようと思いました『猫君 りんねの輪』畠中 恵 インタビュー

「猫は九回生まれ変わる」ということから生死を題材にしようと思いました『猫君 りんねの輪』畠中 恵 インタビュー

AIみたいに便利な問答集

──首玉が持ち主の大嫌いなものに変身することもありますね。真(ま)金(がね)の首玉は最初は槌(つち)だったのに、そこから土(つち)蜘(ぐ)蛛(も)に変化してしまう。蜘蛛が苦手な真金は逃げ出します(笑)。

 江戸時代に描かれた土蜘蛛の絵が残っていまして、すごく怖いんですよ。とくに顔のところが。普通の蜘蛛さんの顔じゃなくて、人みたいな顔で「嫌だなあ、こんなの出てきたら」と思っていたので、ぜひとも出ていただこうと。
 それに、赤猫の火が先に出てきたので、四大要素の火、水、土、風を出さないとと思って、土蜘蛛なら土になる。土蜘蛛になる前は手で持てる槌がいいと思いました。「つち」という音から土蜘蛛にしたのではなく、逆さまに考えて槌を出したんです。

──なぜ真金に持たせたんですか。

 持っていそうだったから。小さな槌を持ってぱかんって叩きそう。俺はこれで戦うんだとか言って。

──そうですね、確かに。そういう猫又たちのキャラクターが楽しい。みかんの首玉も「え~っ」て感じなんですけど、そこは小説を読んでいただくとして、首玉で現代的だなと思ったのは、津(つ)矢(や)真(ま)の問答集。問いの答えが本の中にあると、その項が開くんですよね。AIか、と(笑)。

 私自身、最近、AIを使うことが多くなりました。パソコンのバージョンアップで、気がついたら入っていて、いきなり「めぐみさん」と言われて、「えっ」って。突然AIに名前で呼ばれてショックでした。自分の名前を教えた覚えがなかったので。OSに登録してある名前を呼ぶんですね。

──ドキっとしますよね。

「すいません、なじめないので名前を呼ばないでください」とAIに言ったら、三日ぐらいは呼ばなかったんですけど、気がついたらまた「めぐみさん」。

──忘れっぽい(笑)。

 それからは諦めて、呼ばれるほうに慣れようと思ってます。でも、AIと問答していると、その内容をちゃんと覚えているんですよね。「めぐみさんは○○の傾向だから」とか言われちゃって。

──畠中さんと対話しているAIなら、江戸時代にすごく詳しいAIになりそうですね。

 いろいろと調べてくれるので、便利は便利なんです。

──津矢真の問答集もそうですが、『猫君 りんねの輪』は江戸の話ですけど、現代人が現在の自分の生活と重ねながら読めるところが楽しいですね。

 読み手は今を生きている方たちなので、ふだんの生活のことを思い出しながら読んでもらえるとうれしいです。

寺子屋を意識した猫又の学校「猫宿」

──『猫君』『猫君 りんねの輪』の大きな魅力は猫宿という学校にもあります。猫又たちの成長も楽しみだし、先生がいて、生徒がいてという関係性から生まれる会話やエピソードも面白いです。「ハリー・ポッター」シリーズの「ホグワーツ魔法魔術学校」を思い出しました。

 江戸時代は庶民の学校、つまり寺子屋がたくさんありました。猫宿も人間の寺子屋を意識しています。たとえば商人になりたい子が寺子屋で読み書きそろばんを習います。その後に大きな商家に入ると、商売が終わった後、先輩たちが後輩たちに教えるというシステムがあったんです。その先輩たちも商家の主人や番頭から教え方を見られている。教えられるほうも教えるほうも必死だったようです。
 しかも九年か十年に一遍、京都の本家本元の店に出されて試験を受ける商家もあったのです。その試験に合格したら江戸へ戻って雇用が継続されることになっていて、みんな必死に勉強したそうです。

──猫又の先生たちも厳しいですものね。

 猫又たちは六つの陣地に属していて、各陣が対立しないように新米の猫又たちを猫宿に集めて勉強させているんですけど、それぞれの陣に戻ったら戻ったでいろいろあるだろうから、陣に戻るまでに教え込めることは教え込もうとしています。

──『猫君』では、猫又はしっぽが二股に分かれているので、猫又だと人にバレないように一つにするというところから始まって、人の姿に化けるというところまで成長しました。今回の『猫君 りんねの輪』では首玉を使うというハードルに挑みます。ステップアップしていくんですよね。一方、二冊に共通する要素がアクションというか、戦いの場面。今回も笠をかぶった笠男とよばれている小普請(こぶしん)や侍たちと戦うことになります。アクションシーンは書いていてどうですか。

 猫たちはほんわかした存在なので、激しいアクションを書こうと思うと難しい部分もありますね。アクションってぎりぎりの状況に追い込まれて必死にやるものだと思うんですが、そこにほわほわほわっとした猫たちが出てきて、「えーっ」とか言いながら戦う。緊張感もある程度欲しいなと思いつつ、でも、やっぱりほわほわも欲しいなと思いながら書いていきました。

──緩急を意識されて。

 そう感じてもらえるといいなと。お侍たちとの戦いと、自分の分身みたいな首玉を使いこなすための戦いを並行してやっている感じが出ればいいなあと。

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