がん宣告からの生還…そして娘・貴子が政界へ
――保釈が認められて拘置所をようやく出られたのに、今度は人間ドックで胃がんが見つかった
ステージ2か3、転移している可能性が高いと言われ、人生終わったなと覚悟しました。ただ、幸いにも手術後に転移は認められなかった。
その後に食道がんも見つかりましたが、克服して国政復帰を果たしました。
麦飯で育った私には拘置所の食事もごちそうでした。幼い頃は悪いことをすれば親から、ストーブに薪をくべるための鉄の棒でがつんと頭を殴られたこともあったので、厳しい躾の中で育った分、強い精神力が養われたと思っています。
会社など組織の中で理不尽な、ツラい思いをしている方も少なくないと思います。人より努力し、信念をもって正直に生きていれば、必ずどこかで花は開く。
お天道様は見ていますから。決して諦めない強い気持ちを持って頑張れと言いたい。
――娘の貴子さんは2012年の衆院選に初出馬し、翌年に繰り上げ当選しました。現在6期目で自民党の広報本部長を務め、将来を嘱望されています。裏切りや嫉妬が渦巻く政界に、貴子さんが挑戦を決めた際にはどういう思いでしたか。
中川先生が自ら命を絶つ、私も国策捜査で逮捕された。命を取るか取られるかのような厳しい世界です。そんな戦場に送ることに躊躇し、何も言えませんでした。
ただ、私は公民権停止処分を受け、選挙に出られなかった。後援会の中から「貴子しかいない」という声が上がった。おそらく、私から国政への進出を勧めていたら、娘は断っていたと思います。
最近の話ですが、再審制度の見直しを求める集会で貴子がこう言いました。
「父が捕まった時、私は高校1年生でカナダにいました。あれだけ一生懸命働いた父親がなぜ、正直者は報われないのか。この先どうなるかもわからない。死んだほうが楽かなと思ったこともありました」。
私は初めて聞く話で、本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいになりました。
そんな貴子は以前に、新聞のインタビューで「鈴木宗男の後援者は鈴木宗男が作る景色、舞台を夢見ていたと思います。娘である私が今、政治家である以上、父が作れなかった景色と舞台を作る責任があります」と答えました。
そこまでの覚悟があるのなら心配いらないと思いました。鈴木宗男を反面教師に、宗男のようにはならないという思いがあればそれで十分だと思います。
「孫といる時間は今、一番楽しい時間です」
――貴子さんには2人の小学生のお子さんがいます。お孫さんと過ごす時間はありますか。
小学3年生と1年生になりました。貴子は土日も仕事で自宅にいられないことが多いですから、私に1時間でも時間があれば公園に連れていき、ブランコや滑り台で遊ばせます。アイスクリームが好きで、貴子には内緒で買ってあげたりもしますね。
貴子にはずいぶんと寂しい思いをさせました。小学校の運動会や授業参観に父親も母親も来ない。お手伝いさんの前では泣いていたそうですが、私と妻には一切、言いませんでした。
孫2人もお母さんがいないと寂しそうな表情を浮かべるのですが、口には一切出さない。子どもの頃の貴子と同じです。
だから親の100分の1にもなれないのですが、孫には安心感を与えたいと思って接しています。でも、むしろ癒しをもらっているのはこちらで、孫といる時間は今、一番至福の時間です。
――78歳でまだまだ現役の政治家ですが、終活について考えていますか。
毎朝、神棚と仏壇に手を合わせて、「今日も1日働きます」と口に出しています。夜に帰宅したらまた神棚と仏壇を前に「今日も無事に送ることができました」と感謝の気持ちを述べます。
大晦日や元旦に、私なりの心構えはノートに記しています。ただ、生きている限りは戦いだと思って、挑戦は続けたい。
やはり北方領土問題の解決、ロシアとの平和条約締結です。私は死ぬまで取り組む覚悟です。
5月の大型連休に訪ロします。昨年12月以来になります。今年は1956年の日ソ共同宣言から70年、大きな節目の年です。このめぐり合わせを活かしていこうと決意しています。
自民党にも原則として「定年制」があり、高齢の政治家は引退しろという声もありますが、ただ、年齢は関係ないと思いますよ。実年齢と元気かどうか、頭が働いているか否かには個人差がありますから。
それに私には国策捜査で強いられた監獄生活、公民権停止によるロスタイムが10年あります。若くてもやる気のない政治家はいますからね。そういう政治家こそ退場していただきたいです。
3月にはYouTubeチャンネル「ムネオハウス」も始めました。新聞だけでなく、テレビ離れも若い世代に限らず加速しています。政治家にはますます、主義主張や政策を自ら発信することが求められるでしょう。
そのためにYouTubeはSNSとともに必須のツール。これからも元気にどんどん発信していきますので期待してください。
取材・文/鈴木拓也 集英社オンライン編集部ニュース班

