なぜ、ヘルメットごと開発しなければならなかったのか?
ヘルメットごと設計せざるを得ない理由はいくつかあるが、そのひとつがヘルメット自体の防音性能だ。通風口が乱流を起こさないようになっている必要がある。とりわけ、下側の首回り、アゴ周りはあるていど空力的に密閉されている必要がある。既存のヘルメットでは安全性は重視されているが、開口部の密閉性が低いのだそうだ。

緊急時に頚椎を動かさないでチークパッドを取り外せる最新の仕組みも導入されている。また、密閉された代わりに、内部の空気の流れも再設計することができ、夏のクーリング性能も高いのだそうだ。

もう一つの問題は、ドライバーの位置とサイズだ。
既存のヘルメットにCardoのインカムを組み込むときには、ヘルメットの耳の穴の部分にはめ込む方式になっている。 しかし、この凹みは、音響的に正しい耳の位置にぴったり当てはまっているとは限らない。
多くのヘルメットの場合、ネックストラップを鋲で留める位置が最優先されるので、クッション材の耳の凹みは本来の音響的な耳の正しい位置から大きくズレていることが多い。Beyond GTS/GTでは統計的に多くの耳の中心が来る位置にドライバーを設けている。
しかも、このドライバー、なんとφ53mmの大径なのだ。AirPods Max 2のドライバーがφ40mmであることを考えると、いかに大きなドライバーが奢られているか分かるだろう。

もちろん、音質的な効果もあるが、Beyond GTS/GTの場合、この大径ドライバーはむしろANCで大きな意味を持ってくる。
バイクの高速走行時のノイズには、低周波の成分も多く含まれる。低周波を打ち消す逆位相の音を出すにはドライバーも大径でなければならないのだ。
できれば、我々が普段使っているヘルメットでANC内蔵インカムが作れればいいのだが、この大径ドライバーを耳の正しい位置に配置しなければならない……という点において、ヘルメットごと新設計せざるを得なかったのだ。
『スマートヘルメット』と呼ばれる理由
ヘルメットごと新設計するということで、さまざまな先進的な機能が盛り込まれることになった。
上位版であるGTSのシェルは高価なカーボンコンポジットで作られている。また、帽体自体をインカム搭載前提で設計することにより、さまざまな電子装備の搭載を前提とした設計が可能となった。
例えば先に述べたφ53mmの大径ドライバーの搭載もそうだし、通信に一番適している頭頂部のシェル外側にアンテナを積むこともでき、その結果2kmもの通信距離を実現している。カーボンファイバーは電波をほぼ通さないので、シェルの外側へのアンテナの搭載は必須条件でもあった。

また、後頭部にはLEDブレーキランプを搭載し、センサーが減速を感知すると光るようになっている。これはブレーキから信号を取ってくるわけではなく、センサーで減速Gを検知し、発光する仕組みになっている。

バッテリーは後頭部首元に設けられ、全体の重心を下げることに貢献するとともに、取り外して充電することが可能になっている。

また、センサーは転倒や事故などの大きな衝撃を検知することもできる。単独ツーリングで転倒し、意識を失ったような時でも、スマホアプリと連動して緊急通報が行われるようになっているのだ。