永田町取材歴50年超の政治評論家・小林吉弥氏が「歴代総理とっておきの話」を初公開。今回は岸田文雄(上)をお届けする。
麻生後継を見据えた岸田の布石
いま、自民党内は高市早苗首相の「1強」で、さしもの実力者たちも言動すべからずに“遠慮”気味だ。しかし、そんななかで岸田文雄元首相は、一人だけ目立っている感がある。
菅義偉の退陣を受けて自民党総裁選で勝利した岸田だったが、旧安倍派による裏金事件の責任を取るはめになり、2024年秋の自民党総裁選への出馬断念を余儀なくされた。そのうえで、尽きぬ政治とカネ問題の“諸悪の根源”は派閥にありと、自ら岸田派(宏池会)を解散、他派もこれに倣って麻生(太郎)派を除いて解散した。
しかし、ほとぼりがさめるのは早く、今日わずか1年余にして旧派閥を軸にグループ化が加速しているのは、すでに読者諸賢ご案内のところである。率先して解散したはずの岸田派にしてからが、いまだ会合などで結束を密にしているのが現状であり、懲りないのは自民党の“伝統”なのだ。
旧岸田派の内情に明るい政治部デスクが、こうした岸田の“元気ぶり”の裏を明かしてくれた。
「いまの自民党で政局を動かせる実力者は副総裁の麻生氏のみだが、さすがの麻生氏も85歳と高齢で、次の選挙には不出馬との見方もある。岸田氏とすれば、政局に影響を与え、党を仕切れるのは、まだ60代と気力、体力ともに充実した自分しかいないとの自負があるのだろう。
一部に“再登板”を狙っているとの声もあるが、旧岸田派内にはナンバー2の林芳正総務相もおり、現実にはハードルが高い。そのために岸田氏は、麻生氏の後釜として“キングメーカー”の座を目指しているのではないだろうか。それにしても、今年に入っての岸田氏の動きは、なんとも精力的と言わざるを得ない」
【歴代総理とっておきの話】アーカイブ
“増税メガネ”返上へ 岸田のイメージ刷新作戦
岸田は2月に長崎県で洋上風力発電所の運転開始記念式典に出席、3月に入ると世界各国の調査研究機関の代表が国際情勢を議論する「東京会議2026」に参加している。さらに、同月23日放送のバラエティー番組『しゃべくり007』(日本テレビ系)に出演、20日には折からの米国・イスラエルとイランとの交戦のさなか、自らが会長を務める自民党の「日本・イラン友好議員連盟」の会合を国会内で開き、事態の“沈静化”に向けて熱弁を振るっている。
前出の政治部デスクは、こうも続けた。
「バラエティーには石原伸晃元幹事長一家が出演し、初当選が同期の岸田氏はサプライズの演出で途中から参加した。首相時代に“増税メガネ”と揶揄された際、ユーチューブに上げたら『バズってね』とご満悦だった。
この件について永田町では、『あえてバラエティー番組に出たのは、お茶の間に“岸田あり”をアピールしたもの』という受け止め方が支配的だった」
また、「日本・イラン友好議員連盟」の会合では、日本が米国の同盟国である一方、イランとも伝統的な友好関係を維持してきたことを強調。出席していたイランのセアダット駐日大使を前に、「われわれは外交チャンネルを駆使して対話を行い、課題解決に向けて汗をかくべき」と力説していたという。
「岸田氏は首相に就任する前から、イラン友好議員連盟の会長を務めており、外相として戦後最長の4年7カ月の在職期間中に、2度もイランを訪問している。また、首相就任後も国連総会の場でイランとの首脳会談を開いてきただけに、いまこそ“絶好の出番”と受け止めていると思われる」(前出・政治部デスク)
