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単なるドキュメンタリーでもコンサート映画でもない “没入型ライブ映画” 『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』

単なるドキュメンタリーでもコンサート映画でもない “没入型ライブ映画” 『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』

名匠バズ・ラーマン監督が最新のレストア/リマスター技術を駆使して、エルヴィス・プレスリーを現代に甦らせた映像作品『EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』。2022年に公開された、同監督による伝記映画『エルヴィス』の製作過程で発見された貴重なアーカイブ映像をもとに、圧倒的なパフォーマンスと熱狂のステージを再構築した本作は、単なるドキュメンタリーでもコンサート映画でもない、まさに“没入型ライブ映画”と呼ぶべき一作。キング・オブ・ロックンロールはいかにして時代を超え、いまなお観る者を魅了し続けるのか。今回は、その音楽的ルーツと唯一無二の存在感、そしてその魅力を説明していく。

前作リサーチ中に発見した多くのアーカイブ映像から

エルヴィス・プレスリーの伝記映画『エルヴィス』(2022) を監督製作したバズ・ラーマンが、その製作過程で多くのエルヴィスの未公開映像に触れ、それらを見ているときに、これを伝記映画ではなく改めて編集したいと思い製作されたのが、今回の『EPiC/エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』(2026) だ。前作がエルヴィス・プレスリーの伝記的映画という位置づけだが、これはエルヴィスのライブ映像を中心とした「ライブ映画」という位置づけの作品。およそ1100万ドル (1ドル160円として約17億6千万円) で製作され、全米などでは2026年2月20日から公開され、すでに世界で2350万ドル以上の興行収入をあげている、という。作品自体は、2025年9月6日に「トロント国際映画祭」でプレミア公開された。

ライブ映像の合間には、エルヴィス本人がファンと交流しているシーンや楽屋での姿などあまりふだんは見られない様子がうかがえる。また、過去のインタビューも多くはさみこまれ、ドキュメンタリー的側面もある。

映画を見ての印象は「まるでライブを見ているみたいだ」という感想だ。しかも、良質の大音響で。冒頭から「今日は僕自身のストーリーを語ろう」という発言から始まり、エルヴィスがどのようにしてこの音楽業界に入り、レコード契約を取り、ヒットを出しつつ、人気がどんどんと高くなっていくかを描く。彼のライブ・パフォーマンスにおける観客の熱狂ぶりはすさまじい。

それにしても、求めるお客さんほぼ全員にキスしてまわるなど、いかに「セックス・シンボル」として人気を獲得したエルヴィスでも大変だろうなあ、と思う。

エルヴィスは冒頭のインタビューで「自分はリズム&ブルーズをやっている人間だ」とはっきり言う。その音楽的ルーツをしっかり把握し、意識しているところがいい。南部に生まれ育ち、そうした黒人たちがふだん繰り広げているリズム&ブルーズやブルーズ、さらに黒人の教会音楽であるゴスペル・ミュージックへあこがれをもち、敬意を表してそれを取り入れ、自分なりに解釈をして、自分の音楽「エルヴィス・プレスリー・ミュージック」にしているところが、彼が死してまもなく半世紀 (1977年8月16日、42歳で死去) を迎えるときに広く知れ渡って嬉しい。

リストアで再現される見事な映像と音響

映画の見どころは、まずはその音と映像の綺麗さだ。最新の技術で映像も音もリストアされ、綺麗な音と映像に蘇った。

おなじみの「ポークサラダ・アニー」では、途中に「モノローグ」をいれているが、これなど、その後1970年代後半に広がりを見せる「ラップ」的な側面、「ラップ」の原型のような感じさえした。

また、編集も実にうまい。「リトル・シスター」からビートルズの「ゲットバック」へつなげているところなど、見事だ。まるでライブ上でそのように演奏されているかのように聞こえる。

あるいは、その後大ヒットになる「バーニング・ラヴ」は、この映画撮影時点ではまだ練習中ということで、歌詞カードを見ながら歌っている。これがその後、きちんと録音され、そしてレコードになり大ヒットするということは、まさに新曲の制作現場を体験しているかのようだ。

音楽的に僕が個人的にもっとも気に入ったのは、エルヴィスが「これから1966年のゴスペル曲をやる」といって、「オー・ハッピー・デイ」を歌ったシーン。信心深かったエルヴィスは、幼少の頃から教会に行き、ゴスペルに親しんでいた。この「オー・ハッピー・デイ」は1967年にゴスペル・グループ、エドウィン・ホーキンズ・シンガーズが昔のヒム(讃美歌)をアレンジして出し、それが全米ポップ・チャートでも大ヒットになった。

同じことが、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のカヴァーでもいえる。これは元々作者のポール・サイモンが昔のゴスペル曲にヒントを得て、生み出した1曲で、アリーサ・フランクリンなどのゴスペル色の強いヴァージョンもあり、ひじょうにゴスペルとつながりのある1曲なのだ。

エルヴィスの音楽的嗜好を360度捉えようとしたとき、ブルーズやゴスペル、そして、リズム&ブルーズなどのブラック・ミュージックの側面はもっとも重要な位置を占める。その中でこのゴスペル曲を選んでいるのは特筆に値する。

映画のサウンドトラックには27曲が収められているが、どれもエルヴィスの持ち歌としてよく知られている曲が多い。映画を通して見ていると、エルヴィスのライブにおける選曲のよさが際立つ。あたかも、エルヴィス・プレスリーの「ベスト・ヒット」のような趣に感じられる。

配信元: otocoto

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