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猫はそれほど好奇心旺盛ではなかった──実験で猫は「予想どおりの結果」のほうに強く反応すると判明

猫はそれほど好奇心旺盛ではなかった──実験で猫は「予想どおりの結果」のほうに強く反応すると判明

なぜ猫は「予想通り」に惹かれるのか?

なぜ猫は「予想通り」に惹かれるのか?
なぜ猫は「予想通り」に惹かれるのか? / 猫って 面っ白!/Credit:Canva

なぜ猫は「予想通り」に惹かれるのか?

ここから先は、今回の論文で提示された仮説や過去の研究成果も含めて紹介します。

ひとつの鍵は、猫の狩りのスタイルにあります。

猫は、犬のように群れで獲物を追い回すタイプのハンターではありません。

どちらかといえば、身を低くして待ち、相手の動きを読み、ここぞという瞬間に飛びかかるタイプです。

こうした狩りでは、獲物が一瞬だけ草むらや家具の裏に消えることがあります。

そのとき大切なのは、「獲物は消えた」のではなく、「見えないだけで、まだそこにいる」と扱う力です。

つまり猫にとって「予測」は、ただの知的な遊びではありません。

それは、獲物がどこから出てくるかを読むための、かなり実用的な能力なのです。

ここから考えると、「予想どおり」の展開に猫が反応したことは、不思議ではありません。

予想どおりの場所に対象が現れると、猫にとって次に「関わりやすい状況」になった可能性があります。

予想どおりの場所からおもちゃが出てくると、猫にとってその対象は「追えるもの」「捕まえに行けるもの」になります。

反対に、予想外の場所から突然出てくると、それは単なる獲物というより、「状況が読みにくいもの」になるのかもしれません。

やや人間っぽく言えば、世界が理解でき、次に自分がどう動けばいいかがはっきりする瞬間です。

つまり「予想通り」は猫にアクションを促す切欠になりえるわけです。

猫は予想通りが好き
猫は予想通りが好き / 待ち伏せ型の狩りをする猫にとって「予想通りの結果」と言うのはこの表情のように思わず狩猟本能を刺激してしまうものなのかもしれません。/Credit:Canva

もちろん、猫が常に予測可能なものだけを好むわけではありません。

過去に行われた別の研究では同じおもちゃを何度も見せると猫の遊びは急速に弱まり、色や感覚的特徴を変えたおもちゃを出すと、再び強い遊びが引き出されることも報告されています。

つまり、猫が好きなのは「完全に退屈な同じこと」ではありません。

むしろ猫が求めているのは「大枠は読めるけれど、細部には少し変化がある状況」なのかもしれません。

これは、上手な猫じゃらしの動かし方にも似ています。

いきなり予測不能な動きばかりをすると、猫は警戒してしまう。

ただ同じ場所を往復するだけでもすぐ飽きる。

「たぶん右に逃げる」と思わせて、少しだけタイミングをずらす。

「そこに隠れている」と思わせて、少しだけ顔を出す。

この「読めるけれど、完全には読めない」というバランスが、猫の狩猟回路をいちばん気持ちよく回すのです。

一方、今回の研究ではいわゆる「動機づけ仮説」が提示されています。

これまでの研究で、おもちゃではなく食べ物のような、より意欲を引き出す報酬が使われた場合や狩猟を模した状況では、猫は隠されたものへの興味(対象の永続性)に関する課題でより高い成績を示しています。

つまり、猫がおもちゃで遊ぶかどうかは「面白そうかどうか」ではなく、その対象が「獲物として追う価値があるか」で決まっている可能性がある、ということ。

これを踏まえると、今回の結果は「やればできるけど、やる理由がない」という状態がみえてきます。

予測が当たった場合は「読みどおりだ。取りに行く価値がある」と判断するものの予想外の場合は「状況がよくわからなし」に加えて、動機の部分では「ぬいぐるみだし、わざわざ動くほどでもない」と判断している可能性があるわけです。

サセックス大学公式プレスリリースがこの点について、猫は「結局、それほど好奇心旺盛ではなかった(Not So Curious After All)」と述べていたのも、猫の行動スイッチが入る条件が、そもそもかなり特殊で、既存の動物の行動パターンに当てはめて測れない、という意味も込められていると考えられます。

もっとも、今回の研究によって「猫が好奇心よりも予測可能を好むことが絶対的に確定した」とまでは言い切れません。

論文のなかで著者たちは「調査されたサンプルが猫を代表するのに理想的でない可能性がある」と述べています。

世界中には様々な種類の猫がいろいろな環境下で生活しており「絶対」と言うにはそれら多様な猫たちにも実験を行わなければなりません。

また「猫が哺乳類のなかで例外的なのかについても、現時点では判断できない」と慎重に書いています。

先にも述べたように猫は「隠されたおもちゃ」が「予想通り」と「予想外」の場所から再出現した時に「予想通り」ほうにに惹かれました。

そういう意味では珍しい習性と言えます。

しかし地球上に存在する哺乳類の中には、猫に似たパターンをみせる種がいるかもしれません。

そのため現時点で猫だけが特別に異常とは言い切れないわけです。

それでも今回の結果が、過去の関連研究と組み合わさることで、「猫という生き物の見方」を一段深めてくれたことは間違いありません。

呼んでも来ない、ご褒美のために芸はしない、知らない人には警戒する。

それらの行動の根っこには、「読めるかどうか」を毎回計算している猫の認知があるのかもしれません。

そしてそれが、猫を猫たらしめている理由そのものなのかもしれません。

参考文献

Not So Curious After All: New study finds cats prefer predictability
https://www.sussex.ac.uk/broadcast/read/68547

元論文

Object permanence in domestic cats (Felis catus) using violation-of-expectancy by owner and stranger
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0312225

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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