テレビ出演が減り、建築業界へ。「顔を隠して」はたらいた日々
俳優の仕事が減っていく中で、斉藤さんは解体工事業を営む幼馴染から誘われ、建設現場での仕事を始めました。
最初は手伝い程度のつもりでしたが、現場で経験を重ねるうちにトラックの運転を任されるようになり、気付けば俳優業の傍ら、本格的に現場へ出るようになっていました。その後はガス工事にも従事し、数年にわたって過酷な労働環境に身を置くことになります。

屋外の現場仕事の厳しさは、想像以上でした。「夏は暑いし冬は寒い。手作業で地面を掘り続けると、夜には箸を持つだけで指がつるほどだった」と斉藤さん。「これは社会貢献なんだ」と自分に言い聞かせてモチベーションを保っていましたが、体への負担は大きく、将来への不安も募っていくばかりだったそうです。
一方、現場では芸能人だと気付かれないようにサングラスをかけ、黙々と作業をこなす日々が続きました。注目されることで仕事に集中できなくなること、そして何より「俳優がこんな仕事をしている」と思われることへの抵抗感があったと言います。
しかし、ある時期から“隠している自分”に対する違和感が強くなっていきます。
「悪いことをしているわけじゃない。むしろ、実際に現場で汗水流してはたらいている人たちがいるんだから、自分もこの仕事をしていることを恥じる必要はないと思うようになったんです」

「芸能界だけにいつまでも執着したくなかった。過去に未練を残しているほうがダサいと感じてしまったんです。それよりも、新しい技術を覚えたり、自分が心から好きだと思えることに没頭したりする時間を優先したい。『気付かれたくない』という自分よりも、前向きな気持ちが勝っていきました」
そうして自然体で自分の仕事を語れるようになったころ、中学校の同級生から電気工事の仕事に誘われます。解体工事もガス工事も経験していた斉藤さんでしたが、電気工事の世界だけは未知の領域でした。それが逆に、新たな一歩を踏み込む理由になったと言います。
「できないからこそ、できるようになりたい。そう思って、電気の仕組みすら分からない状態で現場に入り、実践しながら覚えていきました。30代での再出発でしたが、『30歳はまだ何でもできる、やり直せる』と前向きに捉えていましたね。第二種電気工事士の資格も取得しました」
現在は結婚し、お子さんも生まれている斉藤さん。家族との生活について考えるようになったことも、仕事と向き合う姿勢が変わる転機になりました。「電気の仕事を極めるまで続けたい」と語る斉藤さんの表情に、かつての迷いはありません。

「今の仕事が面白くない」と感じている人へ
「はたらくこと」とは何か、その定義を尋ねると斉藤さんはこう答えました。
「仕事をしなかったら、結局は暇じゃないですか。だから、はたらくって本当の意味での『最高の暇つぶし』だと思っていて。それが自分の好きなことや、やりがいを感じることだったら、なおさら最高だよなって」
ただ、その「最高」に辿り着くためには、ある程度続けることが不可欠だとも言います。
「どんな仕事でも、最初はちっとも面白くないですよ。何も分からないからつらいし、苦労ばかりが目につく。でも、仕組みを理解し、自分の力で現場をコントロールできるようになると、急に楽しくなってきます。続けてみてはじめて分かる面白さが、どの仕事にも必ずあるんです」

華やかな世界から泥臭い現場まで、地続きに歩んできた斉藤さん。今、仕事にモヤモヤを抱える若者へ向けて伝えたいのは、根性論ではなく「心の余白」の作り方です。
「やりたくないな、つらいなと思う瞬間は、どんな仕事でも必ずあります。そういうとき、まずは『どうすればこの状況を楽しめるか』と俯瞰して面白がる余裕を持つことですね。そして、どうしても行きづまったときのために、心の最後の引き出しに『まあ、どうにかなるか』というスペースを残しておくこと。その余白があるだけで、自分を追いつめすぎることはなくなります」
※今回お伝えしきれなかったフルバージョンの動画はYouTube『スタジオパーソル』にて公開中
(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり)

