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「昼間にしんどい人」が夜の動画沼にハマる――原因は夜だけではなかった

「昼間にしんどい人」が夜の動画沼にハマる――原因は夜だけではなかった

「昼間にしんどい人」が夜の動画沼にハマる――原因は夜だけではなかった
「昼間にしんどい人」が夜の動画沼にハマる――原因は夜だけではなかった / Credit:Canva

夜中までショート動画を指でめくり続けて、翌日は頭がぼんやり。

この悪循環の犯人は「動画」だと、私たちはずっと信じてきました。

動画を見すぎるから、眠れなくなる。話の筋として、いかにも自然です。

ところが中国の華南師範大学(SCNU)などの研究チームが、大学生6691人を3か月の間隔をあけて2回調査したところ、二つの方向のうち優勢だったのは、むしろ逆向き――「眠れない人ほど、そのあとショート動画にのめり込みやすい」側でした。

しかも、その関係をつないでいた結び目は、夜の不眠だけでなく、とくに「翌日の昼のしんどさ」のほうにありました。

研究内容の詳細は『Personality and Individual Differences』にて掲載されています。

目次

  • その悪循環、向きが逆かもしれない
  • 動画を見るから眠れないのではなく、眠れなかったから動画を見る
  • 「昼間にしんどい人」が夜の動画沼にハマる

その悪循環、向きが逆かもしれない

その悪循環、向きが逆かもしれない
その悪循環、向きが逆かもしれない / Credit:Canva

ショート動画は、数秒から数分の映像を次々に流していく形式です。

「長編の動画」よりも気軽に楽しめることから、近年になってその需要は急上昇しています。

たとえば中国の場合、ショート動画の視聴者は約10億4000万人、ネット利用者の93.8%にのぼることが示されています。

ネット利用者の中では、ほぼ全員と言っていい数字です。

ショート動画がやめにくい理由は大きく2つあるとされています。

ひとつは、おすすめを送り込んでくる仕組み(アルゴリズム)。

あなたの好みを学習して、刺さりそうな映像を、考える隙も与えずに次々と差し出してきます。

お皿が空になる前に次のお皿が出てくる店で、満腹に気づける人はそういません。だいたい、無理です。

もうひとつは、時間の感覚がゆがむこと。

人は何かに深く入り込むと、時間の経過を実際より短く感じます。

「まだ10分くらいかな」と思っていたら、気づけば1時間。

この錯覚が、就寝時刻をじりじりと後ろへ押していきます。

ここまでは、世間が思っている通りの「動画→不眠」の話です。

実際、この方向の証拠は、これまでにもたくさん報告されてきました。

ただし、ショート動画に絞ると、その多くが一回きりの調査でした。

ある時点で「動画をよく見る人は、よく眠れていない」と分かっても、不眠が原因で動画に流れる可能性もあったのです。

それは卵が先かニワトリが先か、まだ判定できていないのと同じです。

さらに従来は「視聴時間の合計」「不眠スコアの合計」といった、大づかみな一個の数字で扱われがちでした。

研究チームが踏み込もうとしたのは、まさにこの”判定できていない部分”だったのです。

動画を見るから眠れないのではなく、眠れなかったから動画を見る

動画を見るから眠れないのではなく、眠れなかったから動画を見る
動画を見るから眠れないのではなく、眠れなかったから動画を見る / Credit:Canva

調査にあたっては中国・河南省の大学で、6691人の学生に3か月あけて2回アンケートをとりました。

動画の使い方を14項目、睡眠を8項目で質問しています。

睡眠の8項目は「夜の症状」5つ(寝つき・夜中に目覚める・早朝に目覚める・睡眠時間・睡眠の質)と、「昼の症状」3つ(日中の気分・日中の体調・日中の眠気)に分かれます。

結果、大きく分けて3つのことが見えてきました。

1つ目は、たしかに「動画→不眠」の流れがあった点です。

影響の強さを表す係数β(相関とは別)で、「動画→睡眠」は0.03〜0.04ほどでした。

この数字は、影響の向きと強さを表す目盛りだと思ってください。

1に近いほど強く、0に近いほど弱い。

問題的な動画の使い方が、本来眠るはずの時間を削っている可能性があります。ここは予想通りです。

2つ目は、「不眠→動画」の糸のほうが、太く出た点です。

「不眠症状→動画」は0.10〜0.11となりました。

「動画→不眠」よりも「不眠→動画」のほうが係数が大きかったのです。

さて、ここで気になるのは、0.04や0.11という数値の小ささではないでしょうか。

そんなに大きな数値ではないように思えますが、これには方法による事情もあります。

心の不調を見るとき、昔ながらの考え方は「氷山モデル」でした。

水面下に「不眠症」という大きな本体が一個あって、寝つきの悪さや日中の眠気は、その本体が水面に出した先っぽにすぎない。

だから倒すべきは、隠れた本体だ――という発想です。

この研究が採るのは、まったく別の見方です。

「ドミノ並べモデル」とでも呼びましょう。

隠れた本体なんて想定しません。

症状の一つひとつを、独立した一枚の駒として床に並べます。

「寝つきが悪い」「昼にだるい」「気分が沈む」「動画がないと不安」――これらを別々の駒として置き、どの駒が、どの駒の”倒れやすさ”と結びついているかの配置図を描く。

不調を一個のかたまりではなく、駒の並び方として見るわけです。

見方を変えただけですが、科学の世界できちんと認められた発想の転換です。

この方法を使えば、並びのなかで「次の一枚を倒しやすい位置」にいる駒を、名指しできます。

ただそうした個別に要員をわけた結果として、個々の要因の影響力を示す数値βが、大づかみの原因より小さく出てしまう場合もあります。

しかし今回はそんな中にあっても「動画→不眠」よりも「不眠→動画」の流れのほうが大きな影響を持っていることが示すことができました。

配信元: ナゾロジー

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