独特な“ボウルカット”のヘアスタイルに、カラフルでポップなファッション。そして、移民としての壮絶な人生経験を笑いへと変える唯一無二のトーク――。いま全米で大きな注目を集めている日本ルーツのスタンダップコメディアン、それがアツコ・オカツカです。
TikTokやInstagramでも大人気で、Instagramのフォロワーは188万人、TikTokは120万人、YouTube登録者数も53万人以上。SNSでは彼女のコミカルなダンス動画やステージ映像が次々に拡散され、“今アメリカで最も勢いのあるアジア系コメディアンの一人”ともいわれています。
さらに最新スタンドアップ作品『FATHER』は、HuluとDisney+で配信開始直後からトップ10入り。アメリカではチケット完売が続出するほどの人気ぶりです。
日本からアメリカへ。波乱の人生を笑いに変えたコメディアン
アツコ・オカツカは、日本人の父と台湾人の母の間に生まれました。台湾で生まれた後、生後3カ月から幼少期を日本で過ごし、10歳ごろに母と祖母に連れられてアメリカ・ロサンゼルスへ移住します。しかし本人は当初、それが短い旅行だと思っていたそうです。のちに彼女は、自身が「祖母に誘拐されたような形だった」と語っています。
アメリカ移住後の生活も、決して順風満帆ではなかったようです。統合失調症を抱える母、祖母、そして自身の3世代で叔父の家の車庫で暮らし、不法滞在状態だった時期もあったといいます。
そんな重い経験を、アツコ・オカツカは独特のユーモアへと変えていきました。彼女はインタビューで「3世代の女性がガレージで暮らしているなんて、結構おかしいですよね」と語り、その“不条理さ”を笑いへ昇華できることが、自分にとって救いだったと明かしています。
さらに彼女は、日本、台湾、アメリカという3つの文化の中で育った経験から、言葉が通じない感覚を常に抱えていたとも語っています。そのため、英語を完全に話せるようになる前から、身体表現や視覚的な笑いを使って人とつながろうとしていたそうです。
この感覚は現在のスタイルにも色濃く反映されており、彼女のステージでは、表情、動き、ダンス、テンポ感まですべてが強烈な個性になっています。
Netflix級の人気へ。SNSとスタンドアップで全米ブレイク
アツコ・オカツカがアメリカで一気に知名度を上げたきっかけの一つが、HBOのスタンドアップスペシャル『THE INTRUDER』でした。
この作品はグレイシー賞の「ベスト・コメディ・スペシャル」を受賞し、『ニューヨーク・タイムズ』は「2022年最高のデビュー作」と絶賛。さらに『Variety』や『Vulture』などのエンタメメディアでも、その年を代表するコメディ作品の一つとして選出されました。
SNSで切り抜き動画が拡散されると、人気が一気に爆発。『THE INTRUDER』関連動画は累計1億回以上再生されているともいわれています。
2024年から2025年にかけて開催されたツアー『FULL GROWN』では、20カ国以上・100都市超・200公演以上を完売。そして今年、新作スペシャル『FATHER』がHuluとDisney+で配信されると、再び大きな話題となりました。
『FATHER』では、Motherと呼ばれる自身のイメージと、“父親的存在”としての視点を重ねながら、家族、アイデンティティ、ジェンダー感覚などを独自のユーモアで表現しています。
アツコ・オカツカ本人も、「この作品は完璧だと思っています。何度も録画を見返し、書き直して完成させましたから」と強い自信を見せています。
また、彼女はコメディだけでなく俳優としても活躍中。トライベッカ映画祭出品作品への出演に加え、ディズニー&ピクサー映画『Elio(邦題:星つなぎのエリオ)』への出演や、ジョナ・ヒル、キアヌ・リーブス出演映画『Outcome』への参加でも話題を集めています。
アメリカでは複数の人気トーク番組にも出演しており、その存在感は年々大きくなっています。

