払いのけられた夕食
仕事から帰ってきた夫は、その日もどこか機嫌が悪そうでした。私は夫の好物の煮物と、白いご飯、味噌汁を並べてテーブルに用意しました。夫は椅子に座るなり、おかずに目を落とし、ぼそりと「こんなの食えるか」と言いました。何のことか聞き返す前に、夫はテーブルの上のお皿を手で払いのけたのです。煮物がフローリングに広がり、茶碗が転がりました。
私はその場に立ち尽くしました。夫は何事もなかったかのようにスマホを取り出し、画面に向かって何かを話し始めたのです。聞こえてきたのは「父さん、母さん、聞いてくれよ。料理一つで嫁がキレてさ」という声でした。
通話越しの「お叱り」
夫はビデオ通話の画面を私のほうに向け、義父母に「ほら、こいつだよ」と言いました。画面の向こうから義父の声が響きます。「夫に向かってその態度はないだろう」。続けて義母も「料理くらいで怒鳴るなんて、嫁としてどうなの」と。私はまだ一言も声を荒らげていません。それなのに、向こうではすでに私が悪者として語られていたのです。
夫は床に散らばった煮物を一切映そうとしません。ずっとこうでした。息子の言うことだけを信じて、私を「気の利かない嫁」だと思っているのは前から気づいていました。今度ばかりは、何も言わずにのみ込むのはやめようと決めました。
