「我慢してるのは俺だけ」のはずだった
平日の夜、夕食を終えてビールを開けながら、また同じ愚痴をこぼしました。「俺だけ小遣い制って不公平じゃない?」「飲み会も趣味も我慢してるのにさ」と続けたとき、自分でもしつこいなと思いつつ、それでもどうしても言いたかったのです。月に2回しか飲みに行けない。半年前に欲しかったロードバイクのパーツも見送ったまま。同じくらい働いているのに、自分の自由になる金額がこれだけしかないのは、どうしても納得がいかなかったのです。妻は黙って聞いていました。
「じゃあ、家計簿見てみる?」
そう言って妻が差し出してきたスマホには、家計簿アプリが開かれていました。責められるかと身構えていた俺の予想とは裏腹に、妻の声は穏やかでした。「全部見せるから、自分で確認してみて」とでも言うような落ち着き方でした。俺は缶ビールを置いて、画面に目を落としたのです。
