勝新太郎、ビートたけし、内田裕也、椎名林檎——。大久保篤志と伊賀大介が、強烈な個性を放つ表現者たちとのフィッティング秘話を語り合う。準備だけでは乗り越えられない、現場の“ノリ”と勝負勘とは。(前後編の後編)
フィッティング、ここに極まれり
伊賀大介(以下、伊賀) 勝新太郎さんのフィッティング(『The Stylist』/108頁~)のエピソード、最高すぎて、シビレました。
大久保篤志(以下、大久保) 勝さん、カッコ良かったなぁ。面白いし、優しいし。
伊賀 じつは掲載号の『宝島』も持っているんです。
大久保 えっ、リアルタイム?
伊賀 ジャストではないですね。ちょっと後に神保町かどこかの古本屋で買って、大久保さんも絶対チェックすると思うんですけど、僕らみたいに雑誌で育った奴らは、クレジット見るの大好きじゃないですか。
大久保 うん、大好き。
伊賀 そしたら、勝さんのところにも大久保さんの名前あるんで、「ヤバい‼ この人、全部やってんじゃん」って。勝てねー、と。
大久保 わはは。
伊賀 『The Stylist』のカラー頁にも、ちゃんと勝さんの写真が載っていて、その上で、裏話を読むんだからたまんない。大久保さんがきっちり準備する人だっていうのは、本を読み進めていけば当然わかります。でも一方で、フィッティングの現場って、準備じゃカバーできない“ノリ”みたいなものがあると思うんです。
大久保 そうだよね。同じ人に同じ服を用意しても、晴れてたらオッケーで、曇りだとなんか機嫌悪くなっちゃって、感じも出ないとか。
伊賀 そんな“ノリ”の究極形態が、ヨウジヤマモトのパンツを見た勝さんの娘さんの「こんなの、父には入りませんよ」からのビョーン(笑)。
大久保 ビョーンで、大逆転だよ。
伊賀 ハリウッド女優のダイアン・レインをぶっちぎったマイアミ失踪事件とか、飲み屋で会った尾崎豊さんを家に連れて帰った謎の一夜とか、エピソードがてんこ盛り過ぎて「昭和芸能裏面史」の向きもあり、昭和好きの俺にはたまらなかったです。
ビートたけしさんと内田裕也さん
大久保 スタイリストを長くやっていると、コクのある面白い人に巡り合う瞬間ってあるよね。伊賀くん、ビートたけしさんもやったでしょ。
伊賀 一度だけ、単行本のカバーの撮影を担当させてもらいました。
大久保 たけしさん、怖くなかった? 俺も一度だけ担当させてもらったんだけど、いろいろやらかして、それっきり。もう、お声かかんない。
伊賀 オーラというか、人間力がとてつもなかったです。上手くスタイリングできたのかどうかは、ちょっと自分ではわかんないです。
大久保 挨拶以外は、一言も喋ってもらえなかったよ。
伊賀 物静かな方ですよね。僕も「うん、うん」ぐらいでした。「今日は、こういう服でやらせていただきます」って挨拶したら、「うん、うん」って。
大久保 えっ、目見てくれた?
伊賀 いや、目は合ってないです。
大久保 そっか。ハイパー好青年の伊賀くんでもそうか。じゃあ、自分的に「これは俺、勝負したわ」みたいなフィッティングは。
伊賀 印象に残ってるのは、内田裕也さんですね。
大久保 おお、裕也さん。絶対、面白い予感。
伊賀 秋元康さんの仕掛けで、内田さんと指原莉乃さんが一緒に曲を出す、みたいな企画があって(『シェキナベイベー』)。そのとき、衣装を担当しました。ライダースを用意したんですけど、取り出したらいきなりカマされて。「おのれ! アメリカ国旗って、どういう意味かわかっとるんか!」みたいな。
大久保 内田さん、関西弁なんだ。
伊賀 あっ、そっちですか(笑)。
大久保 そうだった(爆笑)。ライダースに星条旗の刺繍が入ってたの?
伊賀 背中に、ラインストーンでバーンと入っていて。これでしょ、と思って用意したんですけど、あの、例のステッキをこっちに向けて「おのれ、わかっとるんか!」。
大久保 サービス精神あるなぁ。
伊賀 これ、来たな、と。ここで引いたらTKO負けになっちゃうんで、もう足を止めて打ち返さないといけないと思って、わりとデカめの声で「わかってます!」。そしたら、スーっとステッキが地面に下がって(笑)。
大久保 名勝負数え唄じゃん。
伊賀 いやいや、大久保さん。長州(力)さんにも激ギレされてるじゃないですか(『The Stylist』138頁~)。

