ふと湧いてしまった、小さな疑念
向かいに越してきた女性は、3年前にご主人を亡くしたシングルマザーだと聞いていました。可愛らしい娘さんと二人で、私たちの町内会の真ん中に、おしゃれな新築の戸建てを建てて引っ越してきたのです。
最初は「大変ね、頑張ってね」と素直に応援する気持ちでした。けれど、家の前に停まっている車は新しめのSUVで、子どもさんの服装も身ぎれい、家のインテリアも雑誌に出てきそうな雰囲気。同じ住宅地に暮らす私の暮らしと比べて、明らかに余裕がありました。
「母子家庭なのに、どうしてこんな家が建てられるんだろう」。一度浮かんだ疑問は、頭の隅から離れなくなりました。
仲間内で広がっていった噂
何人かの仲のいいご近所さんに、ふとした雑談で「あの家、不思議だよね」と話してみました。すると、思った以上に同じ感覚を持っていた人がいたのです。
「私もずっと気になってた」「いつも家にいるみたいだし、お仕事してるのかしら」「もしかして、誰かが援助してるんじゃない?」。話はあっという間に膨らみ、いつのまにか「母子家庭なのに新築って何か裏がある」というのが、私たちの間の共通認識になっていきました。
噂が子どもたちの耳にまで届いていることに、私は気づいていませんでした。自分の子どもが、何気ない場面で「あの家は何かあるんでしょ?」と口にしてしまっていることを、後から知ったのです。
