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修学旅行の定番「まくら投げ」で伊東市を元気に。地域とともに大会を育てた男の13年

修学旅行の定番「まくら投げ」で伊東市を元気に。地域とともに大会を育てた男の13年

参加者の人生をも変えたまくら投げの魅力

まくら投げの参加者は、その後の人生を変えてしまう不思議な力がある

まくら投げが続いてきた理由は、競技として成立したことだけではない。その体験が参加者の人生の中に持ち帰られ、別の場所で再生産され始めている。

「学生時代にまくら投げに参加した方が、就職先の会社でまくら投げサークルを始めたことがありました。他にも、先生になって学校でレクリエーションとして取り入れた方もいる。驚いたのは、結婚式でブーケトスの代わりにまくらを投げた方もいたことです。この広がりは意外でした(笑)」

ここで、地方行政が抱えるもう一つの課題に戻ろう。担当者が変わることで施策が途切れ、積み上げた手応えがリセットされる問題だ。

この点で大塚さんが強調するのは、まくら投げが「イベント」ではなく「政策」として成立していることだ。

「まくら投げ大会は、あくまでも伊東市の活性化です。伊東市の政策としてまくら投げは行われているので、職員が変わったとしても、伊東市の中で欠かせない大会になっていることが大切です」

全国に広げて「どこでもできるコンテンツ」にしてしまえば、まくら投げは伊東市としての優先度が下がってしまうかもしれない。あくまで伊東市のPRという目的に紐づけるからこそ、行政も動き続けられる。

「伊東市として全国大会を行って、我々はプロモーションやコンテンツの質、権利を管理しながら、全国・全世界へと広げていき、また伊東市へ還元するするという形で協同ができています」

官民連携がうまくいかない時、課題は「熱意」や「予算」だけに見えがちだ。しかし本質は、その施策が何のためにあるのかが政策として固定されているかにある。まくら投げは、その軸をぶらさない。

「継続」を支えたのは「制度」だけではなく「人」

公式球ならぬ「公式枕」。まくら投げ発祥の地である伊東市を盛り上げたいという想いは官民ともに共通の願いだ

官民連携は、契約や役割分担だけで回るものではない。最後に残るのは、やはり信頼関係だ。大塚さんは、伊東市観光協会の担当者の存在を挙げる。

「第1回から一緒にやってくれていて、気づいたら最初から携わっているのは私と担当者の方だけになりました。何かあればいつでも相談に乗ってくれますし、『大塚が言うならやってみるか』と考えてくれています。とても信頼の置ける方が伊東にいるのは心強いです」

では、若者を惹きつけるには何が必要なのか。大塚さんの答えは明快だ。

「やっぱり楽しさです。楽しさが一番大事。それと、主体的に考えてもらえることが大事ではないかと」

観光客として参加して帰るだけではなく、参加を通して「自分の物語」になる。まくら投げに参加した人は「ピローファイター」と呼ばれるが、その呼び名一つが、参加者を「ただの来訪者」から少しずつ変えていく。

「まくら投げに参加したことがちょっとしたネタになる。自分ごと化してくれる。そこでまくら投げの“関係者”のようになり、伊東市が心を寄せる地域になってくれる」

取材の最後、大塚さんは伊東をこう表現している。

「官民が一緒になって観光を本気で考えている町。魅力は数多くありますが、『本気で伊東に来てほしい』という思いを皆さんが持っています。だからこそ、ユニークなイベントでも官民が本気になって続けることができた。そういった意味で、まくら投げ大会は伊東の魅力そのものを体現していると思います」

まくら投げは、奇抜さだけで続いたわけではない。遊びをスポーツへ磨き、役割を定義し、上達を設計し、リピートを生み、参加者が主体的になるコミュニティへと育っている。

社会の課題を、スポーツで改善する。その実例は、畳の上で飛び交うまくらの中に、確かな答えとして存在している。

PROFILE 大塚 眞|ミスター枕投げ
1991年北海道生まれ、神奈川県育ち。全日本まくら投げ大会インストラクター。学生時代に伊豆で起業し、地域PRに取り組む。スポーツまくら投げの伝道師として、各地でイベントやまくら投げ社員研修等を実施。仕事の傍ら、公共政策大学院に在籍し、官民連携や地方活性化を研究。

text by Akihiro Ichiyanagi(Parasapo Lab)
写真提供:全日本まくら投げ大会

配信元: パラサポWEB

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